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第2話 気付いちゃったものは仕方がない
俺が自分の性癖に疑問をもったのは、わりと最近の事だ。
最初は中学生。
この頃って、大抵ちょっとませた奴に彼女ができたり、AVなんかに興味を持ったりするだろ?
「A組のなんとかって女子が可愛い」とか、「アイドルのなにがしが好きだ」とか。
俺もその話に乗っかるし、可愛いというのも認める。
でも、「あんなの彼女にしたいよな」というクラスメイトの言葉にはあまり共感がなかった。
そうして中学三年生の修学旅行だ。
俺は文化部で温い生活してたから合宿とかもなかったし、体の触れあいなんてのも精々体育の着替えくらいしかなかった。
そんなのが修学旅行で男だらけの大浴場。これに、妙な興奮をした。
「あれ、あいつあんなに引き締まった体してたんだ」とか、「こいつ、意外とデカい!」とか。そんなのマジマジ見ているうちに、何故か息子がムズムズした。
そして、そんな自分に気付いて焦って、湯船から出られなくなって、結果逆上せる寸前になった。
そこからだ。俺、変かもしれないと思ったのは。
高校生になって、俺の性癖は確定した。
女子は可愛いと思うけれど、興奮する対象じゃなかった。俺が興奮してるのはいつも男だ。着替えの時とか、林間学校とか、そういう時に俺はどうしようもなく体が熱くなった。
でもやっぱり、簡単に認めるのは怖かった。
だって、そうだろ?
男が男に興奮するのって、一般的には変な事だ。そういう人がいるのは知っているし、否定したりもしないけれど、まさか自分が! ってのはあるわけだ。
思春期真っ只中の俺は、勇気を振り絞った。
俺には三つ年上の姉貴がいる。これがまた今流行の腐女子ってやつで、かなり前から親にもカミングアウトしてるような奴だ。我が姉ながらどうなんだって思ったけれど、今は有り難い。
姉貴が大学のサークルで遅くなる日の夜、俺はこっそり姉貴の部屋に忍び込んだ。
部屋の壁一面が本棚で、そこには姉貴特選BLコーナーがある。マンが、小説、ゲーム、CDまでありやがる。
我が姉よ、バイトで稼いだ金を高校生からコツコツつぎ込んでなんつー財産築いてんだ。
部屋は真っ暗なまま、手元にランタン型の懐中電灯を置いて、手頃な一冊を手にした。そして……夢中で読み漁った。
心臓跳ね上がって、興奮した。本の中の人物になりきって、自分でTシャツの上から乳首を触って、どうしようもなく息を荒くして……とうとう我慢出来ずにズボンもパンツも脱いで自分で扱いた。
そしてあっけなく、姉貴の部屋でイッてしまった。本を汚さなかった俺は偉い。
フローリングを慌てて掃除して、本を元に戻して何気ない顔で自分の部屋に戻って……ちょっとショックだった。
それからってもの、姉貴が遅い日は部屋に忍び込んでマンガを読みまくった。初回の失敗を忘れずにゴム持参で掃除の手間を避ける事までした。
これが癖になってしまったんだ。姉貴がいつ帰ってくるか、もしかしたら母さんが来るんじゃないか。そういうドキドキが更に俺の興奮を煽った。
完全に変態だって気付いたのもこの頃。俺は切羽詰まった状況ってのに興奮するっぽい。
この頃には好みのシチュエーションも確定。視姦とか、強姦まがいとか、痴漢とかが好きだ。
されたいって思ってるのかもしれない。読みながら陶酔して、「これが俺なら……」と妄想を膨らませて、ついでに前も膨らませてどうしようもない事になった。
そんな中で始まったのが、毎日の満員帰宅列車の中で痴漢されるっていう、現実味のない妄想。実際にそんな事される訳がない分かっていながら、そういう状況に身を置いて勝手に興奮しておかずにしてるんだ。
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