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第3話 本物の痴漢キタ!
「正木、今帰り?」
学校帰りに呼び止められた俺は、ちょっとだけドキッとした。
それというのも呼び止めた奴が問題だ。
「和樹?」
追いかけてきたのは爽やかイケメンで女子から月一回くらい呼び出されている、俺の幼馴染みでお隣さんの東上和樹だ。
高身長で水泳部。とにかくいい体をしている。しかも顔だっていいんだ。ついでに成績も。俺に半分くらいくれてもいいじゃんと思う。神様ってわりと不公平。
実はこいつ、俺の一番のおかずだったりする。
小さい時からお隣さんで、とにかく一緒に遊んだ。しかも小中高と同じ学校。
こんなに長く一緒だと嫌になる奴もいるかもしれないけれど、俺は全然だ。
俺が唯一リアルに妄想できる体と声って、こいつしかいないんだよな。そして、こいつを見てる時が一番ドキドキする。
「お前、部活は?」
「今日は早く終わったんだ。大会の後だしさ」
「そっか」
「一緒に帰ろう」
俺はちょっとドキドキした。
普段こいつは部活があって俺とは帰宅時間がずれる。だからこその妄想遊びだ。既にそれが癖になっている。
そこでこいつと一緒に帰宅って……俺、妄想我慢出来るかな?
なんにしても断る事ができなくて、俺は和樹と一緒にいつもの電車に飛び乗った。
学校の最寄り駅はまだ余裕がある。座席はなくてもギュウギュウじゃない。いつも通りの場所で揺られながら、最近の事を話したししている。
混むのは次の駅、オフィス街でとにかくリーマンが多い。特に今日は金曜日で、電車の中は妙な熱気がある。
「この時間って、いつもこうなのか?」
うんざりした和樹の声に俺は頷く。
隣り合って壁にべったり張り付くようにしている俺達の距離はわりと近い。
その時、俺の後にピッタリと誰かがひっついてきた。途端、俺の妄想スイッチが……
んん?
リアルな指が俺の背中をつっとなぞる。それに、ゾワゾワッとした感覚が駆け上がった。妄想は流石に感触は伴わない。ってことは……これは?
「!」
リアル痴漢が俺の体を触りまくっている。チビでも見た目に俺は男で、それでも触ってるってことは、そういう性癖の人ってことだ。
男の指が和樹がいる方とは反対側から前に回って、制服のシャツの上から俺の胸を触ってくる。
普段妄想に刺激されている乳首がリアルな快楽に反応して、硬くなりだしたのが分かる。
男もそれを感じ取ったのか、更に爪で引っ掻き、捏ねるようにコロコロと転がし、挟んで摘まみ上げた。
「っ!」
「正木?」
ダメだ、足震える。気持ち良くて焦る。どうするよこの状況。俺、幼馴染みの隣で顔も知らない痴漢にいいようにされている。
俺が反応しているのを知った痴漢は更に大胆になった。
腰を密着させて、ズリズリ擦ってくる。それが尻に当たっている。結構硬くて、興奮した息づかいが耳にかかる。
乳首を弄っていた指が俺の口に入ってきて、声を上げられないよう舌に絡まってきた。
「正木!」
俺の異変に和樹が気付いた。焦った顔で助けを求めようとキョロキョロしている。頼む、それは流石に恥ずかしい。しかも俺、そんな和樹を横目に見ながら興奮してるんだ。
どうしようもない変態だけど、情けないけれど、どうしようもないんだよ!
「っ!」
ダメだこれ。俺、和樹の前でイク。駅に着くまであと一〇分はある。俺の経験上、これだけのシチュエーションが揃っていれば余裕だ。
荒くなる息を止められない。口の中に指突っ込まれて舌かき混ぜられて唾液溢れてどうしようもない。蕩けた顔をしている自覚もある。
後の孔を指が押し込むようにグリグリ刺激される。指の先、入ってるんじゃないかって期待と恐怖が入り交じっている。
そして隣でどうしようもなく慌てた幼馴染みが青い顔をして、今にも叫びそうになっている。
頼む、止めてくれ。流石に恥ずかしいしこの状況を説明できない。
駅まであと数分。俺、頑張ってる。
でも電車が大きく揺れた瞬間、俺は陥落した。予想以上に後を弄っている指が俺を刺激して、ズンッと一瞬突き上げられた。ほんの少しこじ開けられた感じもする。ギリギリまで我慢していたのに、これが決定打になった。
「っ!!」
声を殺して、俺はイッた。耳まで熱くなって、荒い息を吐いて、涙目で和樹を見た。
呆然としている和樹の顔を見たら、惨めだししんどいし逃げたいし、でも腰は立たない。
『××駅~、××駅~。降り口は…』
車内アナウンスの直ぐ後でドアが開く。和樹は俺の腕を強く掴んで人混みの中に連れて行く。雪崩みたいな人の動きに乗ったまま、和樹は俺を男子トイレに引っ張っていって、個室に俺だけを押し込んだ。
あぁ、最悪だこんなの……。
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