「スベク！？大丈夫か」 ガラガラとストレッチャーを押して看守が房に入ると、ザナークが駆け寄ってくる。 甘い吐息を纏わせて、周囲にもわかるほどのフェロモンにザナークは目を見張る。 発情期なのか？ ザナークが彼を見ると、股間にはシリコンの貞操帯をつけられていて、アナルには張形か何かの柄が見える。 懲罰房で、こんな扱いを受けていたのかと思い、ぐっと拳を握りしめる。 すぐに助けてやらなくてはと手を伸ばしたところ、看守に阻まれる。 「46番、外したらダメだ」 「懲罰受けたのは俺のためだろ。代わりに俺が懲罰受けるから」 「違う。これは遠野様の言いつけだ。懲罰ではないしお前では代わりにならない。遠野様が、59番のポルチオ開発をしたいと.....」 「こんなんで放置とか、鬼じゃねえか。スベクが壊れちまう」 子宮口をずっと刺激され続けていて、鹿狩は朦朧とした表情で声もすっかり涸れてしまいひゅーひゅーと息を繰り返している。 意識はあるようだが、正気が保てているかどうかもわからない。 「彼に気に入られれば、その後は彼は幸せになれるんだ。わかるだろ」 薬が高いとか苦しいとか気にしなくて済むようになるのは、この施設にいるオメガ皆の願いだ。 「こんなことをする奴に、貰われてもスベクは幸せになんかなれない」 生命を救われた。 今度は自分が助けなくてはとザナークは、看守に食ってかかる。 「あまり暴れると、お前を懲罰房に入れるぞ」 「構わない」 ザナークが看守に殴りかかろうと、腕を振り上げた瞬間、 「.....やめ、っ、ざな、く」 掠れた声で、額に汗を浮かべながら鹿狩が声を出した。 「.....っ、スベク、無理すんな」 「おれは...........かんたんに、は、こわれない」 身を動かすのも与えられる刺激をやり過ごさないとと必死なのか、真っ白いチカチカする視界に目を大きく開く。 子宮口の壁を刺激し続けるエネマグラは、確実に思考を奪っていく。 精神が壊れたり、自殺をしかけたオメガがまとめてどこかの収容所に送られているのは調査してわかっていた。 必ず同じアルファが後見人となっている。 データの流出を阻止するために、殺せないから、壊す気か。 意地でも耐えなくては、水泡に帰す。 .....遠野の陰謀か。 協力するつもりなど、さらさらないということだろう。 身体を取引きに使った時点で、鹿狩は遠野に負けていたのである。 それでも、絶対に、負けたくはない。