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第73話 確かめ合うように(2)
ユリエルに上を譲ったエトワールは、少し考えて悪い笑顔をユリエルに向けた。それを受けて、何か嫌な予感を感じたのは言うまでもない。
「では、俺の顔に尻を向けるように跨いでくれ」
「それは…」
羞恥心たっぷりの格好だ。考えただけで卒倒しそうなくらい。
そもそも、弱い部分を相手に思いきり晒すような事は躊躇いがある。顔から火が出ると言うのなら、出ているだろう。
だが、拒む気持ちは薄かった。そもそも弱い部分などとっくに晒しているのだし、今更だ。
ユリエルは言われた通りに彼の顔に尻を向ける様な形で上にまたがる。そうすると自然と、顔の前に彼の雄々しい物がある。
手に取って、少し扱いた後、ユリエルは思い切ってそれを唇へと招いた。
「んっ…」
切ない色香のある声がエトワールの口から漏れる。気持ちいのだと分かると、不思議と興奮する。もっとこの色香のある声を聞いてみたいと、貪欲に思ってしまうのだ。
だが同時に尻を撫でられる甘く誘うような感覚がある。このまま、何をされるのか期待してしまう。
浅ましいだろうが、血が沸くように全身が熱くなり、緊張と興奮に心臓が壊れてしまいそうなほど鳴っている。ユリエルは彼に与えられる刺激を待ち望んでいた。
「あぁ!」
柔らかな感触が蕾に触れて、押し込まれる。一度しか許していないそこはまだ硬く、なかなか口を開けはしない。温かく柔らかなそれが何度促しても、とても頑固だ。
「口が留守だぞ、リューヌ」
発せられる、男の色香を纏う言葉は同時に命令にも思える。
ユリエルは抗う事もなくそれを受け入れて、エトワールのものを唇へと運び、柔らかく上下に扱く。形の一つ一つを覚えるように丁寧に、流す蜜の味も覚えるように。根元を押さえて喉の奥まで。少しくらい苦しくても続けた。この行為に彼が喘ぐのを聞いて、興奮していた。
「さぁ、こっちもそろそろ素直になってくれ」
柔らかなそれに代わって、少し節のある指がツッと押し進んでくる。
圧迫感と少しの摩擦にほんの少し辛さを感じる。けれどそこは一度、与えられる快楽を知っている。掻き回されながら出し入れされ、解すようにされると徐々に緩まって苦痛は減った。
自分の中に異物が入るというのは苦痛がある。だが、そこが徐々に熱く蕩けていくのを感じると、それが幸福に変わっていく。四つん這いのまま受け入れていくと、そこが熱く溶けてしまいそうになるのを感じた。
「エトワール…」
「もう、欲しくなったんだろ? ここが欲しそうにしている」
「んぅ!」
内側から強く刺激された途端、たまらずに嬌声が上がった。こんなの、我慢できる奴などいないだろう。だが、恥じらうユリエルを見てエトワールは嬉しそうに、金の瞳を細める。
「ここが、いいんだろ?」
「やぁっ、あっ…もぅ!」
「降参か? それとも、もっとか?」
「あぁ!」
弱い部分を何度も緩く擦られ、ユリエルは体に力が入らなくてガクンと崩れた。陥落してしまえば楽なのだが、それは意地でも嫌だ。どうしても、彼と一緒がいい。震える体を押し堪え、浅く息を吐いてユリエルは自身を握り締めていた。強く、痛みが鋭く背を伝って頭に響いても、そうしていた。
「すまない。少し、苛めすぎたな」
必死に我慢していたユリエルはゆっくりと、ベッドに仰向けにされる。抱きしめられて、そうすると自然と許せるから驚く。こんなに酷くされても、ユリエルの中にエトワールを責める気持ちは少しも浮かんでこない。
ゆっくりと足を割り開かれ、ユリエルは一瞬身を硬くする。ヒクンと震える秘部に、硬く熱いものが当たった。
「んぅ!」
指とは比べ物にならない苦しさと圧迫感、そして痛み。なにせユリエルのそこはまだ、男を受け入れるようにはなっていない。狭く柔らかで、頑なだ。
見上げる先で、エトワールも辛そうな顔をしている。端正な顔に男の色気が浮かび、欲に濡れ、それでも大事そうに労わってくれる彼を見ていると、自然と痛みが薄らいだ。
「すまない、痛むだろう?」
「大丈夫…っ」
きっと苦痛が浮かんでいるだろう。肌がしっとりと濡れているのも分かる。エトワールは気遣うように秘部へと視線を向け、一瞬身を引いた。
離れてしまうのだろうか?
その方が苦しくて、ユリエルはエトワールの手を強く引いて、倒れてきた彼の首に抱きついて首を横に振った。
「このまま…」
「だが!」
「痛みも、覚えておく…忘れないから」
受け入れていきたい。むしろこの痛みが、彼を覚えていてくれるだろう。
こんな事、他の誰にも許しはしない。この想いは、彼が全部持っていく。私心は全て彼にあげて、公人となるから。
グッと、貫くような強さで中へと入り込む。悲鳴は出ない、涙も出ない。痛くないように、エトワールは何度も慣らしてくれた。
そうして全てが身の内に収まった頃には、体は汗でぐっしょりと濡れて、体力という体力は殆ど持っていかれていた。
「少し、このままでいよう」
「はい…」
互いに互いの体を感じている。抱き合って、一つになっている間は一体感を感じて安堵が胸を満たしている。抱き合っている体が、この人が唯一自分の愛しい人だと確信があった。
この時間が全てだと思えた。離れないといえた。このまま一つになってしまえればと、願った。
ゆっくりと動き出す律動が、痛みではないものを与えてくれる。一突きごとに嬌声が口をついて溢れる。快楽のツボを押し上げる動きが狂いそうなほどの歓喜を呼び起こす。しがみついて、ぴったりと肌を合わせる。
濡れた音が僅かにする。それを遥かに上回る艶やかな嬌声が、ユリエルの口から漏れた。
「も…少し…っ」
深く押し上げるような動きに合わせるように、ユリエルは腰を動かす。より深く受け入れようと息を吐いて、襲ってくる快楽を出来るだけ先延ばしにしようとする。
でも、そう長く続けられるものではない。断続的に襲ってくる、頭を白くさせるような強烈な快楽と、痙攣をやり過ごせなくなる。しがみつくようにしている腕に力が入る。
「リューヌ…」
「エトワール…っ!」
「くっ…!」
最後の声を飲みこんだユリエルは、弓なりに体をしならせて果てた。痙攣を止められない。息は止まりそうだった。体の内を、熱いものが満たしているのが分かる。
荒い息をついて、エトワールの体が落ちてくる。ユリエルの腕の中で、彼もまた熱い体を震わせていた。
そして、興奮や高ぶりが覚めぬ間に、どちらともなく唇を合わせた。そして見つめ合い、互いの体を確かめ合った。
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