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第72話 確かめ合うように【R18】
【ユリエル】
雪崩れ込むようにベッドへと倒れ、エトワールはゆっくりとユリエルの衣服を脱がす。だがその手が不意に止まった。金色の瞳は、ユリエルの肩を見ていた。
「リューヌ、怪我をしたのか?」
「え? あぁ…」
ジョシュとの戦いで負った傷は、まだ癒えていない。痛みもないし、傷は塞がっているが完全ではない。薄い皮膚がようやくできたくらいだ。
「ここであった戦に、巻き込まれてしまって。戦いがあると知って、いても立ってもいられなくなったのです」
「どうしてそんな無茶をしたんだ! 下手をすれば死んでいたかもしれない」
怖いくらいの真剣な瞳がユリエルを見る。その強さに、ユリエルは少し驚いた。けれど、徐々にじわりと胸の奥が温かくなって、微笑んだ。心配される事が嬉しかったのだ。
傷のある右の腕を上げ、ユリエルは強張ったままのエトワールに触れた。そして穏やかに微笑んだ。
「母の墓があるのです。壊されはしないかと、不安になってしまって。私には肉親などありませんから、母が唯一でした。その墓が壊されることだけは、どうしても我慢がならなかったのです」
巻かれた包帯が、ゆっくりと解かれてゆく。傷が露わになったそこに、エトワールはそっと口づけた。薄い皮膚は、妙に感触を生々しく伝えるのだろうか。背に走った甘い痺れに、ユリエルは喘いだ。
「綺麗な肌を傷つけて。痛かっただろ? 無茶をしないでくれ」
「心配してくれるのですか?」
「当たり前だ。知らない場所でリューヌに何かあったら。そう思うと、不安になる。俺はもう、誰も失いたくない」
苦しそうに吐き出す言葉に、ユリエルは表情を沈ませる。そして、慰めるように優しいキスをした。長く絡める交わりは少しずつ深く、確かになっていく。
「んっ」
「もっとか?」
物欲しそうな顔でもしていたのだろうか。それとも、唇が離れる瞬間に寂しそうな顔でもしていただろうか。
エトワールはそれに応えるようにもう一度、深いキスをくれる。そして何度も舌を絡ませて、互いを探った。
少し硬い、けれど綺麗な指が体を探るように触れてくる。肌がザワザワと感じて、触れられた所から疼き始める。
「もっと、触ってください」
「分かっている。そんなに物欲しそうにしないでくれ。俺も、我慢ができなくなる」
ユリエルは苦笑し、手を頬へと伸ばした。端正な顔立ちに、少し硬い黒髪。そのまま背へと、手の平で触れていく。
ユリエルは躊躇うことなく、エトワールに全てを晒す。エトワールもそれに応えるように触れてくれた。
滑らかな胸元を手が行きすぎ、唇が触れる。その触れる一つ一つが甘く悩ましい快楽を呼び起こして、おもわず声が漏れてしまう。
その大きな手がやがて腹を過ぎ、下肢へと伸びていく。触れられるかと思ったけれどその期待は外れ、手は内腿を撫でた。
ヒクンと体が反応して、ユリエルは足を開いた。それはあまりに浅ましく、恥ずかしい行いだった。思わず顔を背けると、上から「くくっ」という笑いが聞こえた。
「これは反射で!」
「分かっている。だが頼むから、俺がいなくなっても簡単に足など開かないでくれ」
意地悪な感じで笑われると、恥ずかしくもあり反発もある。それに、この言いようには多少文句がある。
怒って声を上げようとしたユリエルの口から洩れたのは、怒気ではなくて喘ぎだった。
「ふぁ! あぁ…」
艶っぽい声が溜まらず漏れる。エトワールが胸の突起を軽く噛み、その後で吸い付いて舌で転がしたのだ。強い刺激に頭の中が一瞬飛ぶ。快楽に押し流されて、怒りなど忘れてしまった。
「激しいのも好きか?」
「嫌いじゃありませんけれど、今のは…」
「悪かったよ。ただ」
引き寄せられ、抱きしめられる。それだけが嬉しい。このまま時間が止まってしまえばいいとすら思える。
「この体を、この心をずっと縛りつけておければと、思うんだ。自分勝手なのも分かっているし、お前の幸せを願うならば言うべきではないのだが。だが、願うんだ」
切なげな表情は優しく、そして寂しげだった。ユリエルはそれを見上げて、僅かに睨む。まさかこんなにも心を縛っておいて、縛る気もないとは。無責任だ。
「では、私の心が移らぬうちに戻ってきなさい。私の心まで離れてしまわぬように。…私も、貴方の事が好きですよ。だから、貴方を想い続けます」
言葉は心に届くもの。この心はもう、互いに届いている。だから疑わず、変らず、しばらくはいられると思う。
ルルエとの関係を改善し、今度は姿を偽らずに彼と会いたい。そうして全てを晒して、もう一度…。
エトワールが優しく抱きしめていた腕を緩める。そして、噛みついた部分を癒すように柔らかく舐め、撫でて刺激し、ユリエルを深く突き落とす。
ただされるだけはどこか悔しくて、ユリエルは彼の剥き出しの雄に手を伸ばし、緩やかな動きでそれを刺激した。
「前よりも上手いな」
「ならば気持ちの違いでしょうね。貴方を少しでも、悦ばせたい」
「困った事を言わないでくれ。性急にはしたくないんだ」
困った顔で苦笑したが、その手は大胆に動いている。体を確かめる様な手の動きが、くすぐったいような疼くような感じがある。
「あぁ、っ…んぅ!」
強く吸われ、肌にも跡が残る。負けないくらい、ユリエルもエトワールの肌に唇を寄せて跡を残した。まるで自分の所有を主張するようだ。
手の中で扱き、先走りが溢れるそれを指に絡める。もう十分に熱く滾っている。溢れたそれを絡めた指を、ユリエルはクスリと笑って唇へと運んだ。
「リューヌ…」
「私にもさせてください。嫌だと言っても、ひっくり返しますよ」
悪戯っぽく言いはしたが、気持ちは真剣そのものだ。それが伝わったのか、エトワールは苦笑して、場所を譲った。
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