42 / 106

41

 会社に着いたのは、お昼をちょっと過ぎた時間だった。二人で部署のオフィスに入ると、島崎がディスクで資料をパラパラと捲っている。 「ただ今、戻りました」  脩は島崎に近づくと声をかける。 「おお、ご苦労さん。どうだった?」 「上手くいきましたよ」  口元を緩ませ、契約書のファイルを島崎に差し出した。 「良くやったな。お疲れ様」  島崎は眠たげな目元を和らげ、頬が緩んでいる。 「田端もお疲れ様。明日は休日だから、二人ともゆっくり休めよ」  島崎は柔らかい声音で告げると、再び資料に目を落とした。 「田端。悪いんだけど、総務と事務にお土産渡してきてもらってもいいか?」  いつもなら脩が行って渡していた。今回は秋良に任せた方が、女性陣も喜ぶだろう。脩は秋良に土産の品を二箱手渡す。 「わかりました」  秋良は素直に受け取り、そのまま部屋を後にした。  脩も自分のディスクに戻り、お土産を配るために包装紙を破いていく。 「おかえりー、世良先輩。めっちゃ寂しかったよー」  草刈が甘えるような上目遣いで脩を見つめる。 「こっちは、うるさいのがいなくて快適だったよ」 「そんな言い方ないだろっ‥‥‥。きっと、田端くんもパワハラ受けてたんだろうな。今も見当たらないし、早速パシリかよ」  拗ねたように唇を尖らせ、草刈がキョロキョロと周囲を見回す。 「パシリじゃなくて、指示を出しただけだから」  思わず深いため息をこぼし、バラした土産を手に持つ。 「俺のは?」 「年功序列。お前は一番最後」  脩は冷たく言い放つと、土産を配りに各ディスクを練り歩く。 「おおー!お疲れさん。さすが世良だな。契約取れたんだってな」  真壁が脩を褒め、どんと背中を叩いてくる。思わず、眉間に皺が寄った。 「おいおい。怖い顔して、美人が台無しだぞ」 「真壁さんが暴力振るうからじゃないですか」 「暴力じゃなくて、スキンシップだから」  何と言っても勝ち目はないと、お土産を手渡すとそそくさと退散する。

ともだちにシェアしよう!