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会社に着いたのは、お昼をちょっと過ぎた時間だった。二人で部署のオフィスに入ると、島崎がディスクで資料をパラパラと捲っている。
「ただ今、戻りました」
脩は島崎に近づくと声をかける。
「おお、ご苦労さん。どうだった?」
「上手くいきましたよ」
口元を緩ませ、契約書のファイルを島崎に差し出した。
「良くやったな。お疲れ様」
島崎は眠たげな目元を和らげ、頬が緩んでいる。
「田端もお疲れ様。明日は休日だから、二人ともゆっくり休めよ」
島崎は柔らかい声音で告げると、再び資料に目を落とした。
「田端。悪いんだけど、総務と事務にお土産渡してきてもらってもいいか?」
いつもなら脩が行って渡していた。今回は秋良に任せた方が、女性陣も喜ぶだろう。脩は秋良に土産の品を二箱手渡す。
「わかりました」
秋良は素直に受け取り、そのまま部屋を後にした。
脩も自分のディスクに戻り、お土産を配るために包装紙を破いていく。
「おかえりー、世良先輩。めっちゃ寂しかったよー」
草刈が甘えるような上目遣いで脩を見つめる。
「こっちは、うるさいのがいなくて快適だったよ」
「そんな言い方ないだろっ‥‥‥。きっと、田端くんもパワハラ受けてたんだろうな。今も見当たらないし、早速パシリかよ」
拗ねたように唇を尖らせ、草刈がキョロキョロと周囲を見回す。
「パシリじゃなくて、指示を出しただけだから」
思わず深いため息をこぼし、バラした土産を手に持つ。
「俺のは?」
「年功序列。お前は一番最後」
脩は冷たく言い放つと、土産を配りに各ディスクを練り歩く。
「おおー!お疲れさん。さすが世良だな。契約取れたんだってな」
真壁が脩を褒め、どんと背中を叩いてくる。思わず、眉間に皺が寄った。
「おいおい。怖い顔して、美人が台無しだぞ」
「真壁さんが暴力振るうからじゃないですか」
「暴力じゃなくて、スキンシップだから」
何と言っても勝ち目はないと、お土産を手渡すとそそくさと退散する。
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