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 罪悪感に押しつぶされそうになりながらも、脩はフラフラと立ち上がる。  清治に言われたとおり門の方へと足を進めていく。  玄関を出ると、少し離れた所に門が見えてきた。歩みを進めていくにつれて、この場所に再び訪れることを許されるのだろうかと悲壮感が募ってくる。  自分が今からすることはある意味、世良家に対する裏切り行為だ。もう、敷居を跨ぐことは許されないだろう。 「しゅうにーちゃん!」  脩は思わず足を止め、驚いて振り返る。美世が脩に駆け寄ってくる。 「しゅうにーちゃん! 行かないで!」  美世はボロボロと涙を流し、脩の足にしがみつく。嗚咽を零し必死に足を掴む美世に、脩は再び涙が込み上げてきてしまう。 「……美世ちゃん」 「美世、脩を困らせちゃ駄目だろ」  清治が困ったような微笑みを浮かべ近づいてくる。 「いやだ! まだ、遊んでもらってない! いつもいつも、ミヨをおいてすぐにかえっちゃう。しゅうにーちゃんは、ミヨのことキライなの?」  涙で濡れた黒い瞳に見つめられ、脩は腰を落とすと美世を抱きしめる。 「……ごめんね。美世ちゃん。本当に……ごめん」  柔らかい黒髪が頬を触れ、胸が苦しくなる。  こんな小さい子にまで、自分は酷なことをしてきたのだ。子守していれば、集会に参加しなくとも後ろめたくない、そんな事を少なからず考えていたのかもしれない。  だからこそ、集会が終わり用が済むと恵美子に促されるまま、早々に切り上げていたのだ。その度に、美世が悲しげな顔をしていた事を思い出す。 「兄さんもごめん……何も出来なくて、してこれなくて……本当に、ごめん」 「良いんだよ。その代り――」  脩が静かに顔を上げ、清治を見上げる。 「これからは、母さんの目を盗んででも遊びに来てくれよ」  脩は目を見開き、照れくさそうに微笑む清治を見つめる。 「……いいのか?」  これから、脩が何をするのか分かっているはずだ。  敵と恋仲になり、添い遂げようとまで思っている恩知らずの弟なのに―― 「もちろんだよ。せっかくこうやって和解できたのに、また元に戻るなんて考えたくないよ」  清治が苦笑いを浮かべ、肩を竦める。清治の言動に唇が震え、喉が詰まってしまう。  唾を呑み「ありがとう」とやっとのことで発する。

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