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「お前のカツと交換なら食わしてやらんこともない」
「いいよいいよ!はい、あーん」
「ん、はふ…うま」
すぐに目の前にカツが差し出され、パクッと口に入れる。揚げたてであろうそれはまだ温かく衣もサクサクでかなり美味い。
さすがに一人の時に揚げ物をしようとかは思わないから、余計に美味しく感じる。
「ほらよ」
俺も約束通り自分のお弁当箱に入っていた卵焼きを箸で掴むと口を開けて待つ律に押し込んだ。
「んまーい」
律はもぐもぐしたあと満足そうにへらっと笑う。それを隣で織田がジッと見ていた。
特になんの表情も浮かべていなかったが、なんとなく不機嫌オーラを感じる。
な、なんだ?今度は何に文句を言ってくれる気だ…!?
「玲哉もカツたべる?」
律は織田がカツを食べたがっているんだと思ったのかニコニコと話しかけるが、それに対して織田は静かに首を振った。
「いや、大丈夫だ」
「あ、じゃあ俺の卵焼きは…」
「いらない」
「ですよね!」
律の時とは大違いで即答されて、掴んだ卵焼きを口に放り込んだ。
「誰だ…あの美人…」
「隣のクラスの奴だろ。転入してきたって…」
「あんなん…抱けたら…最高だな」
「バッカ、お前なんか相手にされるかよ。しかも浅倉と一緒にいるんだぞ」
「ってことはあいつらもう付き合ってんのか?」
「入ってきたの昨日って聞いたよ。昨日の今日でそれはないんじゃ…」
「やだー、律くん別れたって聞いたから次はボク立候補しようと思ってたのに」
「あんな綺麗な人じゃ無理だよ。でも、まあ…
いっつも引っ付いてるあの子よりはだいぶお似合いだよね」
ふいに遠巻きに聞こえる会話から嫌悪感を含む言葉が聞こえて、またか…と溜め息を吐いた。
いくら男しか居ないと言っても、嫉妬はどこに行っても受ける。顔面偏差値と人気の高い奴の傍に、明らかに毛色の違う俺なんかが居たらおかしいと思うんだろう。
何度も言うが俺の顔面偏差値は平均的だ。
なんなら、律に習って髪の毛も眉もそれなりにしているから見れるもんだと思う。
だけど俺の位置というのは周りから見れば羨ましいらしく小学校中学校、そして高校とこのくらいの悪口は安定だ。
最近は周りも俺の存在に見慣れたのか、あまり聞こえてこなかった陰口だっが、今回織田という超絶美人が増えたことで再熱されたらしい。
あー……面倒臭え。
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