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02
こいつ!
うるさいからって通話ボタン押して俺に渡してきたな!律じゃなかったらどうするつもりだったんだ。
織田の適当な対応に若干苛立ちを覚えながら、俺の声は既に向こうに聞こえていると思い織田の携帯を手に取る。
「律!俺だけど…」
『……智ちゃん?』
「あ、分かった?良かった。…ちょっと待ってな。すぐ起こすから」
『智ちゃ…』
「織田!お前ほんとにいい加減にしろよ!お!き!ろ!」
「………、…るさい」
「うるさいじゃねえ!」
「朝から…そんな…デカイ声で喋るな…殴るぞ…………」
ボソボソと喋る言葉に冗談じゃない台詞が含まれていて俺は即座に織田から身を離す。やばい、もうやめよ。俺は知らん。
「律」
『…はぁい』
「駄目だ。全然起きない。なんか急用…だよな?」
『んー、急用というか。朝練。昨日参加するって言ってたんだけど…起きないなら仕方ないや』
「あ~!朝練か!…それってこいつ行かなくて大丈夫なのか?」
『うん。朝練は自由参加だから。試合前じゃないし、厳しくは言われないよ……てかさ』
「ん?」
『……やっぱなんでもない。じゃあまた学校で~』
「お、おお。気になるな。…あとで話せよ!じゃあな」
やっぱなんでもない、って一番気になるやつじゃん。
歯切れの悪い言葉を残して律は通話を切った。昨日から律と電話してばっかだな。織田の声が聞きたいだろうに、俺でごめん。
携帯のホームボタンを押して画面を元に戻すと、一応かろうじて意識があるでろう織田に声をかける。
「バスケ部朝練あるらしいけど、今日は行かないでいいんだな?」
「……ん」
「あと、携帯ここに置いとくから」
「………」
返事をしなくなってしまった。
多分もう夢の中だ。人を起こしておいていい気なもんだよ。
…まあ実質起こしたのは律だけど、律はなんら悪くない。悪いのはさっさと出ないこいつだ。
俺はハシゴを降りてもう一度眠るために、自分のベッドに戻る。
また織田の超絶うるさいアラームで起きる羽目になるのか…と思ったりたら少し憂鬱な気持ちなった。
ああ、そうだ。しまった。
音量設定勝手にしとけば良かった…
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