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04
「…!……うわ」
俺はベンチに座ったままその様子を眺めていただけだった。なのに律が目ざとく俺を見つけて目が合うと、嬉しそうにこちらに向かって両手で手を振ってくるではないか!
思わず、うわ、と心の声が漏れる。
無視する訳にもいかず手を上げて応えると、案の定周りの目がこちらに向いた。
「…出たよ、あいつだよ、律くんの」
「というか律くんの隣に居るのがあいつの彼氏じゃ無かったの?」
「それなんか誤解らしいよ。本当は律くんとあの綺麗な人が付き合ってるみたい」
「えー!?そうなの!?ショック…」
「確かにショックだけど、あいつが傍に居るより全然マシじゃない?それに僕あんな綺麗な人に勝てる気がしないし…」
聞こえてますけど。
いや、分かってる。わざわざ聞こえるように言ってんだろ。
つーかさー?お前らもっと大きい声で言ってみてくれよ。下にいる織田にも聞こえるようにね?あの見た目だけなら女神様レベルの織田くんに「綺麗~」って!きっとブチ切れてくれるからあ!!
「………やめよ」
ここ最近、陰口が多すぎて若干短気になっている俺である。短気は損気。織田とキャラが被っちゃうからカルシウム摂取しなきゃ。
嫉妬と羨望の眼差しを向けられているであろう織田を見ると、律がこちらに手を振ったからかあいつも俺を見ていた。
黄金比率で配置されたような大きな目と視線が交差する。
「………」
いくら見慣れたと言っても、離れた場所からでも分かる整い過ぎた顔立ちの良さに、本当に綺麗な奴だと再確認してしまう。
織田は律みたいに笑顔で手を振ってくることもなく、もちろん俺も手を上げたりもしない。ただ数秒視線があっただけで、織田は律に何か話し掛けられたのか目線を逸らして律に向き直っていた。
「ねー、なんかあの人さっきこっち見てなかった?」
「うん、僕目が合ったよ。ドキッとしちゃった」
「あんな男の人もいるんだね…」
俺は1人で喋る相手も居ないので、どうしても周りの会話が耳に入って来てしまう。可愛いグループの男子達が律の時とは違って静かに興奮しているのが聞こえた。
なんだよ、さっきまで律を取られてショックだなんだと言っていたのに。顔がいいってだけで、そんな反応変えちゃってさ。
俺にはあり得ない態度の変化だ。なんだか少し悔しいし、織田の見た目8割論はあながち間違っちゃいないのかもしれない。
複雑な気持ちになっていると、本日もう何度聞いたか分からないホイッスルの音が耳に飛び込んできた。
やっと試合スタートだ。
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