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熱病と白い鶴の恩返し

律と織田の愛と嫉妬の渦に巻き込まれた何とも板挟みな俺の可哀想な首元は3週間もすると、まるでそんな事実なかったかのように綺麗に治ってしまった。 だんだんと暑くなって来てたから、第1までボタンを留めるのが苦痛で早く治れ早く治れと祈る気持ちでいたので今日から晴れて俺は自由だ!なんならいっそ第2まで開けちゃって鎖骨見せびらかしちゃう? みんな見て!俺のこの綺麗な鎖骨を! 「なに、笑ってんだ。キモ」 「………」 カッターシャツに着替え終えて、鏡の前で歯磨きをしていた俺のニヤけ面を目撃した織田が背後を通りながら棘のある台詞を吐き捨てた。 織田はカッターシャツに腕を通しながら、テーブルに置いていた携帯を確認している。それを歯ブラシ片手に半眼で見やり洗面台で口を濯ぐ。タオルで口周りを抑えながら俺はドスドスと織田の横を通り抜けて自分の机に向かった。 「まーた今日も朝練に起きれなかったからって俺に当たるのやめて貰えませんかねえ?」 「あ?起きれなかった訳じゃなくて、起きなかったんだ」 「言い訳するなんて、織田くんってば小さい男」 「アンタよりはデカイけど」 「たったの2センチだろ!…ってか身長の話してるわけじゃないし、器のデカさの話だし!」 「誰も身長が、とは言ってませんが。まあ、170に乗れなかったアンタからしたら身長の話だと思うだろうな」 「く、くぅぅ……」 嫌味の一つでも言い返してやろうと思ったのに、倍にして返された。悔しいいいい! 地団駄を踏みそうな俺に面倒臭そうな表情を隠しもしない。織田の冷たい目がチラリと俺の第2まで開けたままだった鎖骨に降りたのが分かった。 「…もう綺麗さっぱり消えましたあ」 「あっそ」 ちなみにあの後から部屋でも襟のある服を着ていたので、律には噛み跡の存在を知られずに済んでいる。一番気を使ったのが体操服に着替える時だったが、正面を向かい合って着替えるわけじゃないからか意外と平気だった。 とにかく律に対してはこの3週間ものすごい神経を使ったんだ… 織田から与えられた跡なんて見られでもしたら何をしでかすか分かったもんじゃないし、もしかしたら喉元をキュウと言わされるかも知れない。 さすがに口より手が先に出るような織田じゃないから、それは無いか…と思いつつも念には念を入れて動いた。 でもそれもようやく今日で完全に解放だ! 「あっそって、お前なあ……まあいいや!朝から言い合う元気はない」 「どの口がほざいてんだよ」 「よし!行こ!」 織田の皮肉を無視して、カバンをサッと持ち上げ扉を開けた。多分この時間に出れば、きっと廊下の向こう側には…

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