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まさかの異動

「え、本気ですか」  上司の青木の言葉に、新堂朔耶は思わず口をついて出た。サラリーマンとして、その決定に口を挟む余地はないのであるが、あまりに意外なことを言われたのだ。 「来月から営業に行ってもらいたい」  米国資本大手のメルト製薬に入社して四年。ずっと本社の学術部に在籍してきた。三十を目の前にして、まさか営業に異動になるとは思ってもみなかったのだ。  製薬企業の営業はMR(医薬情報提供担当者)と呼ばれ、医師や薬剤師に自社製品の情報提供を行う。もちろん医学的、学術的な情報提供がほとんどだが、時には一日何十軒も開業医を回ったり、多忙な医師を捕まえるために朝から病院で待ち伏せたりと、なかなかにしてハードな仕事だと聞いている。同期にMRも多いが、皆いつも捕まらず忙しそうだ。  そんなハードな仕事が果たして自分に勤まるのだろうかと、朔耶は思ったのだ。 「あー、そんなに構えないで」  あまりに朔耶が困惑する表情を浮かべていたためだろう。青木が安心をさせるように宥めるように言った。 「大丈夫だから。新堂くんが担当するのは誠心医科大学で、数を稼ぐようなものではないらしい」  その言葉にさらに驚く。 「誠心医科大学って、超大口の取引先じゃないですか!」  ここが会議室であることや相手が上司であることはすっかり頭から抜け落ちていた。それほどに衝撃的な言葉だった。  メルト製薬にとって、都内にある誠心医科大学は最大の取引先だ。朔耶は頭を横に振る。 「いや、本当に! それは無理です」 「とはいっても、東京中央営業所の長田所長の直々のご指名なんだよ」  東京中央営業所というのは、メルト製薬でも常にトップクラスの成績を誇る名物営業所だ。そこの所長である長田は、常にトップクラスの売り上げをキープしてきた、我が社では知らない者は居ないカリスマMR。超大口取引先である誠心医科大学にがっつり食い込み、自社製品の大きなシェアを伸ばした功労者は、若かりし頃の長田であるというのは有名な話で、新卒の営業が入るたびに先輩から後輩へ、脈々と語り継がれる伝説と化している。実際朔耶も新人研修中に幾度となく聞いた。そんな名物営業所長からの直々の指名なんて、どう考えても人違いだ。 「新堂くんだって、MRの資格を持ってるでしょ」  そりゃあ……と言葉を濁す。この会社に入社した者は、入社直後から缶詰となり医学の基礎知識や製品知識を詰め込む研修を受ける。そしてその後、業界が実施している認定試験に合格しなければMRとして活動することが許されていないのだ。メルト製薬では新入社員全員にその認定試験の合格を義務づけている。  そもそも朔耶は薬科大学を卒業した薬剤師であるうえに、MRから依頼された自社製品や医学、薬学の最新情報を収集、まとめて提供する学術部に所属しているため、最新の情報を常にアップデート出来ているという自負はある。  しかし、問題はそれではないのだ。 「いや、そこではなく……お分かりですよね? 僕オメガですよ」  そうなのだ。朔耶が営業職、MRとして働くのに最大の障害が自分の第二の性だった。今でこそ、抑制剤の開発が活発になり、オメガの社会進出も進んでいる。ベータや、ときにはアルファのような仕事をしているオメガもマスコミなどに取り上げられている。しかし、そんなケースは稀だ。  オメガ性は、妊娠可能となる思春期以降、フェロモンに身体のリズムを支配される。三ヶ月に一度の周期でやってくるとされる発情期や、アルファを誘う香り、そして、もともと身体能力的にも劣っていることもあり、アルファやベータと同じように働くには、どうしても周囲の理解が不可欠だ。  朔耶はオメガではあるが、ほぼベータと変わりない生活を送ることができている。それは、抑制剤が効きやすい体質であり、さらにこの会社で働くことが出来ているからだ。  もともと体力に自信はないし、身体も強くはない。そして突発的に発情期が起こらないとも限らない。だから、研究職を除く新入社員は営業からスタートというこの会社の慣例を無視して、内勤にさせてもらっている。これまでオメガの薬剤師が入社したケースはなかったそうだ。今の職場はオメガと理解されているから、とても働きやすい。  なのに今更、営業とは。 「大丈夫、大丈夫。誠心医科大学のアルファ・オメガ科の先生は全員ベータと聞いてるから」  いやいやそういう問題ではないと思うのだがと釈然としない。 「でも、やっぱりオメガっていうのは、なかなかドクターには言いにくいとは思うけどね」  だよなあと思う。  アルファ・オメガ科に出入りをしているMRが、アルファの患者のヒートに引きずられる可能性がないとは限らない。そんな失態を犯したら、MRとして出入り禁止になっても文句は言えないだろう。それに、そもそもオメガは三ヶ月に一度の頻度で発情期に見舞われ全く使い物にならない時期がある。他社のMRにバレたら、きっとつけ込まれる原因になるだろう。  ちょっと待て。  この人事は、会社としてオメガであることを伏せてMRの職務に勤しめということか。第二の性は吹聴することではないが、果たしてそのようなことをできるのか。  なのに青木は無理矢理この話を終わらせようとしている。 「来月からよろしく。大丈夫、長田所長と掛け合って、半年くらいで戻ってこれるようにするから」  そして、そそくさと席を立つ。  朔耶はそれに続くことができなかった。  米国に本社を持つ製薬会社大手のメルト製薬。  その本社営業部、東京中央営業所に三月一日付でまさかの異動となった。  東京中央営業所は、都内に三ヶ所ある営業拠点のなかでも大きな売り上げ規模を誇り、毎年何らかの表彰を受ける、やり手MRが集まる営業所である。  その管轄エリアのなかで、大きなシェアを持つのが誠心医科大学附属病院。管轄エリアのキードクターとなっており、誠心医科大学のドクターの処方を抑えておけば、近隣の医療機関のドクターの処方トレンドもコントロールできるとさえ言われているらしい。  メルト製薬が注力して研究開発を進める医薬品の分野は、アルファ・オメガ領域と呼ばれる診療分野だ。いわゆる「抑制剤」と呼ばれており、その領域では世界的なリーディングカンパニーとされている。  数十年前に開発された、オメガのフェロモン抑制剤。それまで三ヶ月に一度の発情期を恐れながら、社会進出もままならかあったオメガにとって福音の薬剤となった。  メルト製薬が世界で初めて発売したフェロモン抑制剤は「ラスト」と名付けられた。人口の数パーセントしかいないとされるオメガにしか効果がない薬剤だったが、世界各地で薬事承認されると同時に大きなヒットとなった。それほどにオメガにとって発情期のコントロールが求められていたということだろう。  しかしその後、粗悪なフェロモン抑制剤が巷に出回り、多くのオメガが被害を受けるこという社会問題となった。国は検討した結果、オメガの抑制剤を健康保険の適応とし、粗悪なフェロモン抑制剤問題は解決を見た。その頃から、オメガに対する偏見も薄れてきた。  それまでは「病気ではないから」という理由で健康保険から外されていたが、フェロモン抑制剤が健康保険の範囲内とされたことを受け、大病院や大学病院で、オメガを専門に診療する科が徐々に設置されはじめた。それが、現在のアルファ・オメガ科だ。  この世界にはアルファ、ベータ、オメガと三つの性があるが、アルファやオメガが、大多数のベータと大きく異なるのは、この第二の性に心身共に支配されがちだという点だ。そのため、専門に診療する科が求められるという理由で設置された。  アルファ・オメガ科は、当初はオメガ科のみで、こそフォロモン抑制剤の処方が主な診療内容だったが、その後ニーズが広がり、現在はオメガの疾患全般を専門とするようになり、オメガの男性の出産なども含まれている。アルファに関しても、オメガの番としてやはりフェロモンに大きく影響を受けるため、専門医が求められていた。その頃、アルファにとっても福音となるヒート抑制剤がメルト製薬により開発された。発情したオメガのフェロモンに当てられたアルファが、意図せずに襲うというのは昔から珍しいことではなかった。それはオメガはもちろん、アルファにとっても不幸なことである。特に昔はオメガが社会的に弱者とされていたこともあり、アルファによる強姦事件が発生しても表に出ることはあまりなかった。しかし、これだけオメガの社会進出が進み、人権も守られる時代に許されることではない。  いつしか、番を持たないアルファも自衛のためにヒート抑制剤を服用するようになっていた。  そのような社会的背景の波に乗り、事業規模を拡大してきたのが、メルト製薬である。現在はオメガのフェロモン抑制剤とアルファのヒート抑制剤を数十種類を販売している。  今や抑制剤は、年齢や既往歴、さらにはフェロモン量や薬剤耐性などを総合的に鑑みてチョイスする時代だ。患者ひとりひとりの体調に合わせた薬剤選択が可能であるため、メルト製薬のMRも医師との綿密な連携が求められている。  朔耶も十代半ばにオメガと判明してから、メルト製薬のフェロモン抑制剤をずっと服用している。  もともとさほどにフェロモンが強い質ではなかったことが幸いし、番がおらず、作る予定もない現在でも、ちゃんとコントロールできていて、ここ数年辛い発情期を経験していないくらいだ。この薬を飲んでいると自分がオメガであることを忘れてしまうくらいである。  誠心医科大学は千代田区の皇居の近くにある。  朔耶は、コインパーキングに停めた営業車の助手席から出た。新しい上司である中央営業所長の長田も一緒だ。日差しが柔らかくなりはじめたこの日。初めて営業現場に出るのだ。  長田からの直々のラブコールというのは本当の話だった。  営業に向いていそうな薬剤師を社内で探しており、その白羽の矢が立ったのが朔耶だったのだ。長田は三十代後半だが、外見はとても若く見える。実年齢の五歳年下といっても通じそうなほどに、若々しい。MRらしく身なりには気を配っていて、年齢相応の落ち着いたトーンの、決して安価には見えないスーツをスマートに着こなしている。 「誠心医大のアルファ・オメガ科のドクターは五人。プロフィールは頭に入っているよね。全員、アルファ・オメガ科の専門医だ。うちはドクターとの密なコミュニケーションが大事だと思っているから、担当は君を含めて三人。君には、和泉暁医師についてもらう」  朔耶は頷いた。今日はその和泉医師に挨拶に伺うためにアポイントを取っている。 「和泉先生は、誠心医科大学を首席で卒業して、近隣の民間病院で研修を修了した後、関連病院を回って三年前に戻ってきた。今はアルファ・オメガ科のナンバーツーだ。若いのに優秀だよな。とにかくまじめで厳しくて素早いレスポンスを求める先生だから、文系上がりのMRに任せておくのは心許ないんだ。薬剤師の君が来てくれて助かったよ」 「失礼いたします。メルト製薬でございます」  アルファ・オメガ科の医師が詰めている医局には、三人の医師が居た。  長田は当然それらの医師と顔なじみで、気軽に話しかけられている。長田もそつなく営業スマイルを浮かべて挨拶する。  室内の奥のデスクで、ノートPCを眺めていた白衣姿の男に、長田は遠慮がちに声をかけた。 「和泉先生、お忙しいところ申し訳ございません。新担当の挨拶に、少しお時間をいただけますでしょうか」  白衣姿の男が振り向く。  朔耶は心臓を掴まれたような衝撃を受け、思わず目をそらし、俯いた。  そのドクターが訳もなく眩しく思えたのだ。まず目に入ったのは意思が強そうで知的な光を湛える瞳。そして整った眉。理由なんて見つからない。男なのに、ぞくぞくするような美形だった。 「へえ。珍しく長田さんがいらしたかと思えば、直々にご紹介を」 「新たにこちらでお世話になる新堂です」  長田の紹介を受けて、朔耶も前に出、名刺を出して一礼する。 「お時間をいただきありがとうございます。新堂朔耶と申します。どうぞよろしくお願いいたします」  すると、和泉医師が首を傾げる。 「あれ、新堂……? ときどきMRさんの話に出てきていた思うんだけどな。本社の学術にいました……?」  なんて記憶力だと思う。かつて、朔耶はこの営業所のMRに同期がいたのだ。そこから新卒で学術にいった変わり種と話されてもおかしくはない。 「…そ、そうなんです。もともと学術なので、知識はあります。必ずや先生のお役に立てると……」  長田がそうフォローするが、和泉のなにかに触れたらしい。 「へえ、MR未経験者をうちに当てるって、メルトさん、当院をそんな風に見ているの?」  和泉のそんな挑発的な言葉に、長田の表情がこわばり、空気が凍った。 「いえ! そんなことは!」 「じゃあ、その新人さん本当に役に立つわけ?」 「もちろんです!」  思わず朔耶が答えていた。 「新堂!」  長田の制止に朔耶は自分の出しゃばりに少し後悔したがもう遅い。  和泉は意味ありげに朔耶を上から下までなめ回すように見る。 「ふうん。じゃあ、明日までにおたくのフェロモン抑制剤の新薬『ラスティス』の海外での副作用症例と、この週末にアメリカで行われた学会で、そのラスティスと、同じ新薬の『エム』の併用臨床試験の結果が発表されたでしょ。向こうの報道でちらりと見ただけなんだけど、その全文を用意してくれないか」  正直息を飲んだ。  それについては朔耶も把握していた。自分が前の部署にいたらここ数日で和訳して全国のMRに情報提供する話題だ。それを、第一線の現場で働いていて、情報収集もままならないほど多忙なドクターが、最先端情報を把握していることに驚いた。  中途半端な仕事はできない。そんな焦りを無理矢理胸のなかに押し込めた。 「承知しました。もちろん和訳で、明日朝一番にお持ちいたします」  その返答に和泉医師は、心から意地の悪そうな笑みを浮かべた。 「楽しみにしているよ」 「お前なあ~」  誠心医科大学附属病院の医局を辞去した長田と朔耶はそのままパーキングに停めた営業車に戻ってきた。そこで、長田は朔耶に恨みの声を上げたのだ。 「ほどほどにしろ。心臓が止まるかと思ったぞ」 「……すみません。なんかカッとしてしまって」  ちらりと見ただけで、営業に向いているのかなんて暴言を吐かれるとは思わず、思わず虚勢を張ってしまった。和泉というドクターは一体どれだけ傲慢なのだろう。前任のMRの苦労が知れるというものだ。  だから、先程は売り言葉に買い言葉だ。 「ラスティスとエムの併用試験結果か。あれ、まだ原文も手に入ってないんだろ」  当然アメリカの学会で発表されたものなので、原文は英語だ。 「たぶん、今夜にでも本社の学術は手に入れると思いますが……」 「ぎりぎりじゃないか」 「はい……。それを翻訳するとなると……おそらく徹夜です」  営業所に帰ったら、すぐに学術に問い合わせをしないとならないと思った。 「君は……学術では翻訳も担当してたしな」  元部署が本社の学術で本当によかったと、朔耶は思った。  自分には伝があるが、普通のMRでは原文を取り寄せるのでも時間がかかりそうだ。  朔耶は先程まで相対していた白衣の男を思い浮かべる。 「一筋縄ではいかなそうなドクターですね」  それが和泉に対する素直な感想だった。長田も頷く。 「和泉先生は若いが次世代を担うと言われている。要求は厳しいけど、薬剤師で学術畑を歩いてきた新堂くんなら対応できると思ったんだよ。抑制剤って、患者さん個々で効果の違いがかなりあるだろう。医薬品の情報提供といっても、そこはどうしても患者さんの個々の話に落とし込んでいくことになる。医学薬学のバッググラウンドが求められる。君には、あの和泉先生と対等の渡り合って欲しいんだよ」 「僕にそれできますか」 「え、できると思ったから、学術から引き抜いたんだよ、わたしは」  苦笑しながら、長田は朔耶を流し見てくる。 「期待しているからな」  そういえば、初心者MRの自分が大得意先に大口を叩いたのに長田から注意を受けていないことに今更ながら気がついた。  もしかして、このような展開も、目の前の上司のなかでは想定内だったのか、と朔耶は思った。  その後、誠心医科大学と周辺病院を回る医薬品卸の営業担当にも挨拶をして、夕方に営業所に戻ってきた。  本来であればそれで営業日報を記載して業務終了となるが、和泉医師と約束を交わした臨床試験結果の論文も和訳しなければならない。一応、イントラネットで学術部が公開している論文を検索してみたが、目当てのものは、やはりタイミングが早過ぎるようで、アップされていなかった。  おそらくいまメンバーの誰かが和訳をしているのだろうと思う。  本社の学術でも、医学論文を今日明日中に和訳ができるほどの語学力を持つ人間は多くはない。朔耶はそのうちの一人、二つ下の後輩の鈴村に連絡を入れてみた。彼は留学経験を持つ薬剤師という経歴の持ち主で、その人懐こい性格で、朔耶も目をかけていた。  すると、偶然ながら鈴村が和訳を担当しているとのこと。早急にその資料が欲しいと朔耶が言うと、まだ半分くらいしか翻訳が終わっていないと泣かれてしまった。和泉と約束をしたのが明日だ。 「わかった。それ、僕も手伝うからメールで送って」  そう言うと、鈴村は歓喜した。 「やったー! 神が降臨した! 新堂先輩が手伝ってくれるなんて助かりすぎます! いま送ります!!」  そう言って鼻息荒く電話を切る。しばらくすると、添付で論文が送られてきた。  その論文を開くと、まだかなりのボリュームがあった。  つい先週までこの手の論文と格闘していたのだから慣れたものだ。朔耶はプリントアウトすると、その翻訳を始めた。  翌朝、早朝。  朔耶は運良く出勤時の和泉医師を、院内の廊下で捕まえることができた。 「……おはようございます」  和泉医師は、少し驚いたように朔耶を見下ろし、おはようと挨拶を返してきた。 「ご依頼いただきました論文をお持ちしました」  そう言って手にしていた封筒を渡す。和泉はそれを受け取ると、封を開く。中には、明け方までかかって翻訳で格闘した論文が入っていた。 「申し訳ありません。本社のチェックがまだ入っていないものですので、ドラフトとして考えていただければ幸いです。正式のものは本日午後にもお持ちいたします」 「へえ、本当に持ってきてくれたんだ。本社の人たち大変だったね」 「和泉先生の直々のご依頼ですから……」  朔耶は冷静を言い聞かせながらそう応じた。すると和泉医師は、その整った顔立ちで、朔耶の顔を覗き込んできた。 「目の下クマがあるが……」  和泉の手が伸びてきて、朔耶は思わず身体を引いた。 「す……すみません」  和泉は、受け取った論文をぱらぱらとめくる。 「もしかして、君が翻訳したの?」 「本社の学術にいる同僚と二人がかりでなんとか……」  おそらく和泉にもこの論文のボリュームからして一晩で終わるものとは思っていなかったのだろう。 「ありがとう。助かる」 「とんでもごさいません」  その短いひと言では、和泉が朔耶をどう評価したのかはっきりとは読み取れなかった。

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