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勝負下着(和泉視点)

いつも時間軸が前後していて申し訳ありません(そのあたり本当に脈絡なく書いていて) 今回のお話は、和泉と朔耶が番った直後くらい。 朔耶がいよいよキャリアアップとして誠心医科大学病院以外の得意先を回ろうとしている頃の話です。 ୨୧┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈୨୧  今夜こそ、これを朔耶に渡すのだ。  そのように密かな決意で帰宅した和泉暁の手にあるのは、百貨店の紙袋に入れられたきれいにラッピングされた包み。先日、多忙の中で暇を見つけて新宿で購入してきたものだ。  先程、番の新堂朔耶から「そちらのマンションにこれから伺います」という少々他人行儀な報告がメッセージアプリに送られてきた。職場からの距離を考えると、さほどかからずにここに姿を現すだろう。  そしたら、これを渡すのだ。 「え、僕にですか」  到着早々、和泉は朔耶に先程のラッピングされたプレゼントを渡した。グリーンとイエローのチェックの紙袋に入れられたそれを、朔耶は驚いた表情で見つめ、そして和泉を見上げた。 「そうだ。朔耶にと選んだんだ」  最初は驚いた表情を見せた朔耶だが、その後すぐにぱあっと顔が明るくなった。 「開けても良いですか?」  嬉しさを隠しきれない様子で、朔耶が和泉に問いかける。和泉が頷くと、その場で包みを開け始めた。 「え……? これって」  戸惑う声が聞こえた。  包みを開けて出てきたのは、きれいにフィルム包装された布物製品。上部がゴム製になっており、そことフィルム包装にインナーブランドが刻印されている。 「パンツ?」  和泉がうなずいた。 「そう。勝負下着ってやつだ」 「え」  朔耶の狼狽した声が上がる。 「しょ……勝負下着……ですか?」  一瞬で顔が真っ赤になった朔耶が問い返す。  和泉も言ってしまってから気づく。そういう意味の勝負下着ではない。 「あー……。世間一般でいう意味じゃないぞ。  ……えっと、朔耶が新しい得意先でもベストパフォーマンスを出せるようにっていう意味合いで、だ」 「あ……」  思わず想像してしまったのと違ったのだろう。さらに顔を赤くした朔耶は、先にお風呂をいただいてきます、とそそくさとバスルームに向かった。 「お風呂ありがとうございました」  そう律儀に言われて、和泉は頷く。ちょうどふたりで軽くアルコールでも摂ろうと、つまみを用意していたところだった。 「暁さんがプレゼントしてくれた勝負下着、すごいです!」  朔耶が少し興奮した様子で切り出した。 「へえ?」  少し嬉しくなって、寝間着姿の朔耶を見る。  彼は腰に手を当ててから、下半身を撫でる。先ほど渡した下着を、風呂上がりに身に着けてくれたらしい。  そのつもりで帰宅直後に渡したので、和泉も嬉しくなる。   「締め付け感がないんです。すごく穿きやすい」  そう言って脚を上げてみせるくらい感動的らしい。自然和泉の声も高くなる。 「だろ。日本人男性の体型に合わせたカッティングだから無理がないんだ。そのあたりは、やはりメイドインジャパンだな」 「あと、あの、フロント部分も収まりが良くて……」  少し言いにくそうだが、満足そうな様子。それもちゃんと考えた上で選んだのだ。 「前も後ろも立体形成されたデザインだから、ちゃんと股間が独立したファールカップになってるんだよ。朔耶のものにも無理はないし、ポジションがちゃんと収まる」  男性用下着はものによっては股間の収まりが悪くて、もぞもぞする場合もある。 「あの……、嬉しいです」  ようやく和泉の意図をしっかり理解できたのだろう、朔耶が恥ずかしげな表情を浮かべた。 「ローライズだからぴったりしてるだろ? でもそのほうがパンツラインもきれいに見えるし、ストレスも少ない。  インナー程度なんて馬鹿にできないからな。肌に身に着けるものだから、ちゃんと選んだんだ」  朔耶が、ありがとうございます……と小さく言った。 「ちょっと見せてよ」  そう思わず言うと、朔耶が躊躇った。 「……穿き心地はいいですけど……少し照れますね」  それは拒否ではないと判断した和泉が、寝間着のズボンに手を入れた。 「あ……」  少し声を上げたが、それでも拒絶する感じではない。  その反応に調子にのった和泉は、新しい下着を身に着けた朔耶の肌を撫で上げた。 「ふ……うん」  なんと愛おしい声だろう。  嬉しくなって、下着と肌の間を指で行き来する。  立っていられなくなった朔耶が、和泉にもたれかかってきた。 「なんか……正面とか、ちょっとリアルなシルエットで。僕のものの大きさが、バレバレで少し恥ずかしい……」 「見るのは俺だけだから、問題ないっていうか、むしろそそられる」 「暁さん?」 「中身はすでにばっちり見てるんだから問題ないだろ」  そう一蹴すると、そのままソファに押し倒し、ズボンを剥いた。  正直、こんなことをするつもりで下着を贈った意図はないのだが、恥じらう朔耶が可愛すぎて、和泉はまじまじとその部分に視線を集める。  薄いグレーのコットンに包まれた朔耶の股間。ぴたっとしたデザインで、きゅっと締まった印象の彼の下半身のラインをきれいに見せてくれる。  そこから、どうしても視線が集まってしまうのがフロント部分。陰茎を覆う立体的なデザインが穿く者にとっては快適さを保証するが、見る者にとっては視覚的な刺激が強い。  テンションが上がる。 「やっぱり朔耶はローライズシルエットがいいと思うな」  和泉のリクエストに、胸の下の朔耶は、これから善処しますと恥じらいながら答えた。  明日から朔耶は誠心医科大学病院以外の得意先も回ることになる。それは以前から、彼の上司からも伝えられていたことだった。それが一日の活動量のどの程度の割合になるのか、まだはっきりとはしていないが、明確なのは、彼が「和泉付」ではなくなるということだ。  プライベートでは最も近い距離になったが、それでも寂しさを不安を拭うことができない。  だから、自分の選んだもので朔耶の身を守りたいと考えた結果が、このインナーだった。  これも一種の独占欲なのかもしれない。 「で、脱がせても良い?」  そんな問いに、朔耶は躊躇いながらも小さく頷いた。 「いいですよ」  あっさりとお許しが出る。 「だってパンツは汚したくないから」  朔耶が抱きついてきた。すでに身体と気持ちが敏感に反応し始めている。  和泉は自分の欲の深さに呆れつつ、朔耶のその場所を堪能するために、その下着のウエスト部分に手をかけたのだった。 【了】

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