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第1話
ぺたぺたと床のうえを素足で歩く音が聞こえる。
目を開けると、アキの後ろ姿。
「……帰ったんだ」
「ああ」
アキは冷蔵庫からビールを一本取り出すと、壁に寄りかかってプルタブを起こした。
「そんなとこで寝てると、身体痛くなるぞ」
「……そうだな」
仕事から帰って、ソファーで寝落ちした。
……違うな。
部屋にアキがいないことを確認して、帰りを待ちながら寝落ちした。
起きあがると眼鏡の位置をなおし、テーブルの上に置いたままの、缶ビールを口に運ぶ。
すっかりぬるくなり、気も抜けてしまった缶ビール。
けしてうまくはないのだけれど、冷えた缶ビールよりもこっちの方が、いまの僕にはお似合いな気がする。
「このあいだもこうやって、ソファーで寝てたよな」
「そうだな」
「その前も」
「ああ」
アキはいったい、なにを確認したいんだろう?
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