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第2話
まぁ場所も場所だし、いくら芸能事務所が運営する学校だって言ってもなかなか来ないよな、こんな田舎に。
「俺だって家が潰れたりなんかしなきゃ、多分こんなとこいなかったと思うし・・・・・・」
俺の家はむかーしむかし、それこそ江戸時代から続く呉服屋だった。祖父母は反物の色染めを職とする人で、母と父はその出来上がった着物に柄を描く職人。
一人息子の俺は中学に通いながら着物を縫い上げるお針子のアルバイトを手伝ってた。一家総出で沢山の着物を作ってきた。
けど、それも祖父母が相次いで亡くなるまでの話。
今のご時世、着物なんて高い物を着る人は少なくて。それに今は洗える着物とか安くて便利な物が売れる時代。
そんな時代に昔ながらの高くて扱いづらい着物なんかそうそう売れる訳もなく。
営業成績は次第に悪化。それに畳み掛けるように続いた祖父母の不幸に耐えられなかったんだろう。あろう事か父親が長年住み続けた家とお店を勝手に売り捌き俺と母を捨てての蒸発。
どこぞの漫画の世界か、なんて突っ込まれてしまいそうな話だけどそれは全部本当のお話、なのだ。
「一万歩譲って家とお店売って蒸発までは許す。けどせめてその売って得たお金の一部でも残して行きやがれクソ親父・・・・・・ッ」
あー思い出しただけでも腹の立つ。お陰で俺とおふくろは二人して路頭に迷った挙句、今じゃ風呂トイレ共同四畳半一間で住んでんだぞ。有り得ない。有り得なさすぎだろ!!
でも、そんな俺達親子を神様は見捨てたりしなかった___。
ポーン! と半分壊れかけたかのように半音しかならないチャイム音が狭い部屋の中に響く。
はーい、と台所に立って返事をするお母さんに「俺でるよ」と答えて、薄い板を貼り付けただけの引き戸に手をかける。
立付けが悪くなかなかずらない戸を「フンッ」と色気のない掛け声をあげながら開けば、そこには見ず知らずの2人組が立っていた。
紺色のスーツをビシッと着こなし、無表情に近い顔の男性。そしてその前に仁王立ちしていたのはまだあどけなさの残る笑顔を携えた少女。
「えっと、どちら様・・・・・・ですか?」
2人を交互に皆が瞳を瞬かせそう尋ねる俺に、少女の方が「こんにちは」と笑みを深くさせる。
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