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第3話

「こんにち、は?」  え、誰? 誰だこの2人。 「あの・・・・・・?」 「ああ、御紹介が遅れました。私(わたくし)ルートプロダクションという芸能関係の事務所を経営しております、阿蘇日和、と言います」 「あそ、ひより・・・・・・さん?」  差し伸べられた少女の手をゆっくり掴んで握手を交わす。 「こっちの男は私の秘書の茶々しゅうたろう」 「よろしくお願いいたします」  深々と下げられた頭に、俺も「は、はい」とどもった返事を返しながら小さく会釈を返した。  自己紹介されたけど聞きなれない2人の名前。やっぱり知り合いじゃないみたい。というか芸能プロダクションの社長? この女の子が? 「えっと・・・・・・申し訳ありませんけど今日はどういった御要件で・・・・・・?」 「ああ、これは失礼しました。今日伺ったのは山梨さかえさんにお会いしたくて」 「山梨さかえは俺ですが・・・・・・」  俺に何か? と首を傾げれば、彼女が何故か驚いたように目を見開く。  な、なに、なんでそんな顔すんの?  訝しげに「あのぉ・・・・・・?」と続ければ、彼女は「失礼」と咳払いをしたのち薄紅色のコートの袖から1通の手紙を取り出す。 「この手紙を」 「手紙・・・・・・?」  おずおずと受け取り、封をあけ中を確認する。中には白い紙が1枚収められているだけだった。  それを取り出し広げてみると、そこにはただ一言 「話が、ある。から、今すぐ、こ、い?」  とだけ書かれていた。他には何も書かれていない、ただ、その一言のみ。  封筒の方も見てみるけど、差出人さえも明記されていない。一体なんなのこれ。  いきなり来いって、しかも手紙で? いや、これは手紙じゃねーな。ただのメモみたいな紙切れ1枚で来いってなんなんだなめてんのかオイ。 「あの、これなんなんですか?」  眉をしかめながら文面を彼女へと向ける。すると「え?」と不思議そうな表情を見せながら手紙へと顔をよせた。 「っのクソガキ!」  愛らしい顔がみるみる歪められ、舌打ちと共にポロリと零れた悪態。 「茶々」 「はい、社長」 「お前、もうちょっと気のきいた文が書けないのか?」 「と、申しますと」 「僕は誘い文句を書けと言ったんだ。これのどこが誘い文句なんだ。ああ?」  先程までの雰囲気とは打って変わって荒々しい口調に変わった彼女が俺の手からひったくる様に手紙をとると、バシン! と小気味よい音と共に隣に控えていた男性の顔へと押し付ける。 「これのどーこーが誘い文句だって? こんな命令口調で今日日の男の子がホイホイ付いてくると思ってんのかこの世間知らず!」  暫くグリグリと男性の顔に押し付けたあと、ぐちゃぐちゃになった手紙(だったもの)を握り潰す。そしてそのままくるりと俺の方へ踵を返すと、驚きに固まった俺の手を掴んできた。

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