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第4話
「とりあえず、来てもらっていい? 話があるってのは本当だし」
「えっ、え、ええっ、ちょっと!?」
そのままグイグイ引っ張って俺を家の外へと連れ出そうとする彼女に、俺は悲鳴にも似た声をあげる。
その声に気が付いたのか、夕飯の支度をしていた母が「どうしたの?」と顔を覗かせた。
「母さんこの子がいきなりっ・・・・・・」
いきなり現れてついてこいって、と言いかけた言葉は彼女に口を塞がれることで阻止されてしまう。
「んっ!?」
「あ、お母様ですか? 私阿蘇と申します。ちょーっとさかえくんとお話したいんですがいいですか? いいですよね? ありがとう!!」
はぁ!?
畳み掛ける様にそれだけいうと、力任せに手を引っ張られ外へと連れ出されてしまった。
カンカンッと錆に錆びた階段を落ちる様に駆け下りていく。階段を降りた先には黒塗りの見るからにヤ〇ザちっくな車が停まっていた。その後部座席に押し込まれるように乗せられると、俺の隣りに彼女が身体を滑り込ませて「出せ」と運転席へと座った秘書の男性へ命令する。
ゆっくり走り出した車の中で、俺は軽くパニックを起こしながら遠くなっていく我が家を見送るしかなかった___。
どれくらい走っただろうか。大きなビルが建ち並ぶ街を走り抜け、沢山の木々が並ぶ森の中へ入ったと思ったら次に現れたのは・・・・・・。
「降りて」
ブレーキの音を響かせて車が停止する。停ると同時に、さっさと降りた阿蘇さんが車の外から手を伸ばしてくる。
その手に助けを借りつつ車から降りると、でんっと音が聞こえそうな程大きくそびえ立つ建物が視界全体に飛び込んだ。
「ここは・・・・・・?」
そう訊ねる俺の言葉に「付いてきて」と素っ気ない返事が返ってくる。
「おい、俺は無理矢理連れてこられたんだぞ。説明ぐらいしてくれたって・・・・・・」
「わかってるって。とりあえず僕の部屋で話そう」
そう言って自分より頭3個4個も高い門の前へと立つ。門の横の煉瓦造りの塀のに備え付けられたインターフォンの様な機械へ掌をかざせば、ギギギと重い音をたて門が横へ滑っていく。
「コーヒーでも飲みながら。その方がゆっくり話できるだろ?」
「そりゃ、そう、かもしれないけど・・・・・・」
じゃあほら、早く付いてきて。と
門をくぐり中へと入っていった阿蘇さんの背中を軽く睨みつける。
「なんだよあの態度」
でも、ここがどこかわからない今は彼女についていくしかない、か・・・・・・。
はあ、と小さく息をついた後、俺も門をくぐり彼女の後へと足を進めた___。
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