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【Si と言うまで帰さない】ゆまは なお

ふわりと浮かび上がってきた帆立を次々と油から引き揚げて天台にのせていく。 生で食べられる帆立だから、本当にかるく衣をつけてさっと揚げただけだ。 カウンターの向こうへ出すのは、給仕のイタリア人男性がやってくれる。 加賀美彰人(かがみあきと)は料理のテーブルへちらりと目を向けた。 海老と真鯛の数が減ったようなので、それを揚げることにしようか。 それとも目の前で揚げて熱々を出したほうがいいだろうか…。 やはり冷めると味が落ちる。一旦手を止めて、箸を置いた。 ここはローマの古い貴族の屋敷だ。 いや屋敷というより城というほうがいいかもしれない。 高い天井からきらめくシャンデリアがいくつも下がりホールを照らしている。 内装は現代風にアレンジされていて、あちこちにソファとテーブルが置かれ、真ん中の大きなテーブルには料理や果物やスイーツがふんだんに用意されていた。 デコルテを大きく出したドレス姿の女性やスーツ姿の男性たち。 もっとラフな格好の者も多いが、いずれにしても幼いころから社交界に慣れた特別な階級の人々だ。 無造作に見えてもつま先から頭のてっぺんまできちんと手入れが行き届いている。 彼らは賑やかにしゃべって笑い、飲んだり食べたり、ふざけ合って抱き合い踊っている者もいる。 部屋の一角には大きなカウンターキッチンが備え付けられて、数人のシェフが肉を焼いたりパスタを仕上げたりしていた。その中に加賀美もいて、天ぷらを揚げているのだった。 まったく貴族の世界ってのは桁が違うな。 表情を変えないまま目の前の光景を眺める。 「パーティへ出張シェフに行ってくれ」 チーフに言われたのは一週間前のことだった。 イタリアに修行に来てまだ二か月の自分に声がかかるのはおかしいと思い、訊けば貴族の邸宅でのパーティだという。 「日本食も人気だから一品入れたいそうだ」 それで納得した。 イタリアンのシェフではなく日本食の板前が必要なのだ。 3年前にイタリアンに転向する前は、7年間東京の割烹料理屋にいた。 初めは寿司をリクエストされたが、ネタの仕入れや仕込みが困難なことから難しいと返事をした。 それなりの寿司もどきはできるが、納得のいかない料理を出す気はない。 ライブキッチンがあると聞いて天ぷらはどうかと提案してOKが出た。 パーティが始まって1時間ほどは揚げたての天ぷらということでかなりたくさんの数が出たが、もうそろそろ落ち着いてきた。 ふと会場内がざわついた気がして目をやると、背の高いスーツ姿の男性二人が入って来たところだった。 二人とも人目を惹く華やかさを生まれながらに持っているタイプだ。 明るい金髪に爽やかな笑顔、もう一人は緩やかにウェーブのある栗色の髪に上品そうな表情が印象的だ。  「ごきげんよう、リカルド」 「チャオ、フラン。元気だった?」 「ええ。ミケーレもご機嫌いかが?」 「退屈な毎日だね。でもみんなに会えたから気分がよくなったよ」 見ているだけでも目の保養になる二人組はあっという間に女性陣に取り囲まれる。 笑い声が上がり、金髪の男が楽しげな表情で女性たちをあしらっているらしい。 軽く挨拶を交わしたあとは、シャンパングラスを取ってソファに落ち着いた。 「リカルド、どうした、浮かない顔だな」 「いつもこんな顔だ」 「そりゃ、お前がご機嫌だったことはあまりないが、そこまで仏頂面でもなかったと思っていたがな」 歩き回っている給仕から今度はワイングラスを受け取って、ソファに座ったミケーレがリカルドの顔を覗き込む。 リカルドの肩まで届く長めの髪がゆるやかなウェーブを描いている。 華やかで上品な顔立ちは王子様とあだ名されるのも無理はない。 「下らない事が多くてうんざりしてるだけだよ」 「それは然り。この世のことなんておよそすべてが下らない」 ミケーレの芝居がかった言い様に、リカルドは疲れたようなため息で答えた。 その顎をミケーレがすくいあげて意味ありげに囁く。 「いっそ恋でもすればいい」 「バカバカしい。恋くらいでこの鬱屈がどうにかなるとでも?」 「なるかもしれないだろ? ほら、こっちを見てるぞ」 どこかで見た顔のドレス姿の女がグラス片手に軽く首を傾げて微笑む。 モデルか女優か、きれいな顔にきれいな体。 「ガキと女に興味はない」 「やっぱり男のほうがいいのか?」 「今さら訊くのか」 「いや、それならあそこはどうだ?」 「…やめておく。利害関係があるのは面倒だ」 ミケーレが指した先には、数人の美しい男たちが立って談笑している。 家柄も容姿も申し分ない。中には過去、何度か寝た男たちもいる。 その場限りで終わった者もいれば、短い間の恋人ごっこをした者もいた。 いずれにしても興が乗らない。 でもまったく違うタイプの相手がいれば、この退屈な日常も少しは変わるだろうか…。 会場を見るともなく視線を巡らせていたリカルドはふと、キッチンカウンターの向こうに立つ男と目が合った。 西洋料理のシェフ達とは違う白い上着に短い帽子。 ひどく整った顔立ちの男だった。 黒い瞳に短い黒髪のオリエンタルビューティだ。 まっすぐに目が合って、彼ははっとしたように目を瞬いた。 「なあミケーレ。彼、どう思う?」 「は? あのシェフか? ……きれいな顔だな」 言外にお前好みだと言われ苦笑した。 「おいリカルド、口説くつもりか?」 「どうだろうね…」 そう答えたが、立ち上がって彼の前に行ったときにはそんなつもりはなかった。 「こんばんは。何か揚げましょうか?」 立ち姿は堂々としているが、少したどたどしいイタリア語。 それなのにどこか甘い声。 そのギャップがよかった。 「お勧めは?」 「こちらのスズキと帆立が新鮮ですよ」 「ではそれを」 彼が長い箸で素材を衣に入れ、油の中にふわりと浮かべた。 流れるような動作に見とれていると、あっという間に揚がって皿が出された。 ピンクとグリーンの塩が添えてある。 「抹茶塩とアンデスの岩塩です。熱いので気をつけてください」 うなずいてそのままスツールに腰かけて、白ワインを飲みながら熱々の天ぷらを食べた。 うまい。思わず顔を上げると、澄ました顔の彼がかすかに微笑んだ。 パーティ料理がおいしいことはほとんどない。 だがシンプルに塩だけで食べる天ぷらは予想以上にうまかった。 彼の腕と素材がいいのだろう。追加で海老とアスパラを注文した。 「日本人?」 「はい」 「ローマに住んでるのか?」 「はい。2ヶ月前からラ・ロッソに勤めています」 ローマの三つ星老舗レストラン。 そこに勤めているとなれば、それなりのキャリアと腕を持っているはずだ。 今着ているのは日本料理のシェフの服のようだが…。 「イタリアンのシェフ?」 「はい、まだ修行中ですが。その前は日本で7年間、日本料理店に勤めていました」 「なるほど」 それで天ぷらを任されたのか。   じっとカウンターの向こうの彼を見つめると、真っ直ぐに見返してきた。 切れ長の黒い瞳が美しい。臆さない様子が気に入った。 そしてきっと彼はゲイだ。黒い瞳に吸いこまれるように尋ねていた。 「いつ終わる?」 「え?」 「この仕事」 目を眇めて彼を見やると、彼は黒い瞳をちょっと瞬いてリカルドの意図を探るような顔をした。 でも一瞬でそれを消して穏やかに答えた。 「10時を過ぎれば帰っていいと」 「そう。じゃあまた後で」 こちらの意思は伝わったはずだ。伝わらなかったならそれでも構わない。 「おいしかった、ごちそうさま」 先ほどよりは浮上した気分でカウンターを離れた。 去っていく後ろ姿を見送って、加賀美は心の中で首を傾げていた。 一体何がお気に召したのか、どうやら自分は誘われたらしい。 また後でと言われたが、こういう場でのルールを知らない。 …いいか、成り行き任せで。 気が変わってパーティの間に別の相手を見つけるかも知れないし、誘いに乗ったかどうか自分でも定かではない。 返事は何もしていないのだ。 断られるとは露ほども思っていない傲慢な態度がなぜか嫌ではなかった。 ああいう男を振り回すのも楽しいかもしれない。 少なくとも顔と体は申し分なかった。 ねえ、俺はそんなに簡単じゃないよ? 目の前に青いドレスの金髪美人が立ち、ブロッコリーと真鯛をオーダーする。 鮮やかなグリーンのブロッコリーを手に取りながら、加賀美はうっすら笑みを浮かべた。 「彼を誘った」 「は? あのシェフ? マジか」 ミケーレがにやりと面白そうに笑う。 「日本人?」 「ああ。ラ・ロッソのシェフ見習いだと」 「へえ。もう口説いて来たのか?」 「さあ?」 どちらでもいいのだ。 顔が好みだったから退屈しのぎに声を掛けただけだ。 誘われ慣れているようだった。 軽く目を瞬いたけれど、さほど驚いてもいなかった。 リカルドは黒い瞳を思い出しながらワインを飲みほした。 シェフの皆さまはもう結構です、と言われてキッチンを後にした。 控室にはシャワールームもついていたので、加賀美はありがたくシャワーを浴びた。 仕込みも入れたら5時間ほどキッチンにいたから、油くさくなっている。 料理の匂いは髪や指先にしみつく。 この後の展開が読めないが、体を拭いて私服に着替えた。 メイドに案内されて裏口から建物の外に出ると同時に「セニョール・カガミ」と声を掛けられた。 スーツの男性が「こちらです」と案内する先には黒い車。 用意がいいんだなと苦笑する。 名も知らない相手の誘いに乗っていいものか。 ちらりとそんなことを思ったが、まあいいさと大人しく後部座席に乗り、そのまま10分ほど走って車はどこかの建物に着いた。 地下駐車場に入って車のドアを開けてくれた運転手が「これをどうぞ」とカードを差し出す。 エントランスには誰もおらず、オフィスビルのようなエレベーターが五基だけ。 スロットにカードを差し込むと真ん中に5と書いてあるエレベーターが開く。 音も振動もほとんどなく上昇し、扉が開いたので降りた。 無機質だった地下のエントランスとは一転、エレベーターホールには大きな花瓶に生花が活けられ、上品な間接照明に壁際には水が流れるスクリーン、どこからか控えめなピアノの演奏が聞こえる。 ホールを出た先にドアは一つしかない。 ドア横にインターホンがあったので、カードを入れずに押してみた。 中からドアが開いて、さっきパーティ会場で会った優美な男が立っていた。 ジャケットは脱いでシャツ姿になっている。 緩めたネクタイがセクシーだった。 やわらかく微笑んだハニーブラウンの瞳と目が合った瞬間、やはり好みだと思った。 「チャオ」 かるく引き寄せられて唇が重なった。 背後でゆっくりとドアが閉まる気配がする。 男は急がなかった。 唇を触れあわせたまま擦り合わせて、弾力を確かめるように唇を食む。 かるい戯れ合いがしばらく続き、そっと舌先で誘われた。 素直に舌を差し出すと、すぐに深いキスになる。 成り行きでここまで来てしまったものの、加賀美はまだ態度を決めかねていた。 パーティでちらちらとチェックした彼は、退屈そうで憂いを帯びた横顔がとても色っぽかった。 このままベッドに直行でも構わないが、それはなんだかつまらない。 どういう気まぐれで自分を誘ったか知らないが、生来の天邪鬼が顔を出してきた。 男はキスが上手だった。きっとかなり場数を踏んでいる。 どんな身分で立場か知らないが、相手に不自由はしないはずだ。 思う存分、互いの口腔を味わってから、彼はにこりと笑った。 「シャンパンはどう?」 「いただきます」 広いリビングに通された。 キッチンからグラスとボトルを持ってきて、彼は自らコルクを抜いてグラスに注ぐ。 テーブルにはきれいに皿に盛りつけられたチーズやチョコや生ハム。 幅の広いソファに座ってくつろぐ姿は、優雅で毛並みのいい高貴な猫のようだ。 「ローマに来て2ヶ月だって?」 「はい」 「いくつ?」 「28」 「へえ、日本人は若く見えるね。せいぜい25くらいかと思ってた」 気に入らないなと思う。 貴族のお坊ちゃんの退屈しのぎに選ばれたのは構わないが、見くびられるのは我慢がならない。 「あなたは?」 「リカルドだ。リカルド・グラツィアーニ」 なるほど。グラツィアーニ家のお坊ちゃまか。 ヨーロッパや北米をメインにホテル業、アパレル業、流通業などいくつもの事業を展開している名門だ。 「年は26。君は?」 年下か。それも悪くない。 「加賀美彰人(かがみあきと)」  「日本人の名前は不思議な発音だな。どう呼べばいい?」 「加賀美でも彰人でも好きなほうで」 「じゃあ、アキトにしよう」 会話の間もリカルドは加賀美の髪に手を差し入れて、短い髪のさらさらした手触りを楽しんでいる。 「素敵な黒髪だ…」 唇が触れそうな距離で囁かれた。そのまま髪にキスをする。 されるままになりながら、加賀美はリカルドの胸にしなだれかかった。 固い胸筋に手を這わせて目を閉じると、きちんと気配を読んだ唇が頬に触れ耳に触れ、顔中にキスの雨が降る。 彼はどうやらロマンチックなセックスを好むようだ。 再び唇で戯れ合いながら、両手はゆったりとお互いの体のラインを確かめる。 「抱いてもいいか?」 額を合わせて誘う彼に、加賀美はしっとりした声で囁いた。 「いいえ、今日はご挨拶だけ」 思いがけない返事に、リカルドが目を瞬いた。 「何だ、おあずけなのか?」 「そんなにがっつく人じゃないでしょう?」 「ここまで来てそれが通じるとでも?」 「慎重派なのでね、よく知らない男とは寝ませんよ」 悪友たちが聞けば爆笑物のセリフを吐いて、つつっと人差し指でリカルドの頬をなぞる。 上品な王子様の顔がわずかに苦笑する。 もし強引に迫ってくるようならそれも一興と思っていたが、リカルドは鷹揚な態度を崩さなかった。 「なるほど。では君を我々のパーティに招待しよう」 「パーティ?」 「そう。お互いもう少し知り合おう。心配しなくてもいかがわしいものじゃない」 「べつにいかがわしくても構わないのに」 いや、むしろその方がお互いよく知れると思うけど。 「おや、嬉しいね。じゃあそれにも招待しようか」 会話しながらシャツの上から互いを愛撫し合って、焦らしあう。 「本当にしない?」 「今日のところはね。お楽しみは取っておくタイプなんです」 「僕はすぐに頂きたいほうなんだけど」 意外にせっかちなんだろうか。それも楽しい。 「肉でもワインでも熟成させたらおいしくなるでしょう?」 「獲りたての魚やフルーツだってうまいだろ?」 そのねだり方がかわいくて加賀美は声を上げて笑った。 「そうですね、確かに」 首を傾げてしばし考え、もう少し踏み込んでもいいかとうなずいた。 「では、お望みの場所にキスして差し上げましょうか?」 その申し出にリカルドはじっと加賀美の顔を見つめた。 「どこにでも?」 「ええ、どこにでも」 にっこりと笑って答えると、リカルドは眉根を寄せて加賀美の本音を探ろうとする。 そんな表情もセクシーだ。 ぐっと密着したままの下半身を擦れあわせるように動かして、硬くなったことを知らされた。 「本当にどこでもいいのか?」 「ええ、お望みのところにね」 そっとそこに手を這わせると、さらにぐっと硬度を増した。 男の体は素直で正直だ。 かわいいなと微笑んで見上げると、リカルドがお手上げだとため息をこぼした。 「まいったな。こんな小悪魔だったとはね」 「とんでもない、大人の分別ってやつですよ」 昂ぶったそこを挑発するようにさらに撫でてやると、ぞくりと欲のしたたる声がした。 「では、ここにキスして?」  煽ったのはそちらだと猛ったそこを押しつけてきて卑猥に揺らめかせる。 上出来だ。 陥落した彼に向かって加賀美はにやりと唇を上げて笑い、ボトムの前立てに手をかけた。 パーティ会場は大きなクルーズ船だった。 事前に「服装は?」と確かめた加賀美にリカルドは「よければコーディネイトさせて」と答えて、セレクトショップに連れて行った。 「悪いけどオーダーする時間はないから既製品で我慢して」 我慢もなにも日本でもオーダーなんかしたことはない。 6畳ほどもある試着室で呆れるほど何枚ものシャツとスーツを試着させられ、最終的に3組のスーツをリカルドは選んだ。 物好きだなと思いながら拒否する。 「こんなにいらない」 「僕がこれを着ているアキトが見たいんだ」 リカルドはさわやかに笑って取り合わなかった。 エスコートされた船の中はきらびやかだった。 「チャオ、リカルド」 「素敵なドレスだね、マリア」 「ありがとう。どなた?」 「友人のアキト」 何人かと同じような挨拶を交わして、適当にリカルドが会話を切り上げた。 さすがに社交慣れしていてごく自然な態度だったが、内心はそうでもなかったらしい。 「しまったな。君は女性から見ても魅力的なんだな」 光沢のあるシャンパングレーのスーツを着た加賀美は、すっきりときれいな顔立ちが引き立っている。 オリエンタルビューティの男性版に女性の視線が集中した。 もちろんある種の男性からも。 「そう?」 「もっと似合わないスーツを選べばよかった」 子供みたいに拗ねた顔をするリカルドを加賀美は声をあげて笑った。 「アキトはすごくモテただろう?」 「リカルドこそ。噂をたくさん聞いたよ」 「へえ、どんな噂?」 「素敵な噂ばかりだったよ」 ぽんぽんと肩を叩いてやると、リカルドは渋い顔になる。 「ところで、カジノへ行ったことは?」 「ないな」 「やってみる?」 「いいね」 初心者でもできるルーレットに座った。簡単なルールは知っている。 何度か賭けるうちに増減しながら少しずつチップが減っていく。 ギャンブルの才能はないらしいと、残りを全部一点賭けにした。 「どういう数字?」 黒の17に意味はあるのかとリカルドが問いかけた。 「つき合った男の数?」 ささやきに呆れたような目線が返る。 ふふっと口元だけで笑うと「からかってるのか」と苦笑を滲ませた。 「とんでもない、真剣勝負に決まってる」 「じゃあ僕とも勝負しよう」 「いいね、何を賭ける?」 「この勝負に勝ったらアキトが僕の望みを聞いてくれる、負けたら僕がアキトの欲しいものを何でもあげる」 「俺が勝ったら、リカルドの言うことを聞くのか?」  意外な提案に加賀美の目が丸くなる。 「そう。勝ったらいい気分でわがままを聞いてくれる気になるだろ? 負けたらつまらない気持ちになって欲しくないから、僕からプレゼントをするよ」 王子様の考えは独特だ。 負けたら言うことを聞け、というのはプライドが許さないのか、それともさっき言った通り気分よく賭けをするための方便なのか。 加賀美は笑って了承した。 二人の会話が聞こえていたか知らないが、ディーラーはツキをくれる気になったらしい。 あるいはリカルドが何者か気づいていて、最後にサービスを取っておいたのかもしれない。 からんからんと軽すぎる音で黒の17にボールが入った。 「おめでとうございます」 カラフルなチップの山が寄越された。 粋なディーラーに十分なチップを残して換金を頼み、加賀美は席を立った。 ホールのブッフェ料理に手を出す気にならず、二人で上階のダイニングに来た。 個室なので気兼ねなく話ができる。…もちろんそれ以上のことも。 「君は勝負強いのかな?」 「あれはリカルドに花を持たせてくれたんだろ?」 完璧なテーブルマナーで白身魚のカルパッチョを食べる加賀美は機嫌よく微笑む。 ここのシェフは腕がいい。 「アキトはおいしそうに食べるね」 そう言うリカルドはホワイトアスパラガスの白ワインソースを上品に口に運んだ。 「料理人は食いしん坊が多いからね」 「君こそ相当モテてきたんだろう?」 「それなりに」 ワインを飲みながら完璧な微笑みで加賀美はリカルドをはぐらかす。 思っていたより遊び慣れている上に性悪な加賀美にリカルドは振り回されている。 「で、俺は何をしたらいいんだ?」 リカルドのいたずら心に火がついた。 いたずらっぽく黒い瞳をきらめかせる彼をどうにかして困らせてみたい。 「ここで脱いでって言ったら?」 加賀美は動揺も見せずににやりと笑う。 「悪くないけど、もっと刺激的なことがいい」 そう言うと靴を脱いだ足先がリカルドの股間に入って来た。 90度の位置に座っているから加賀美の右足だけだが、器用な指先が絶妙な力加減でそこを撫でさする。 「おい、ちょっと…」 そこでノックの音がして、次の皿が運び込まれた。 加賀美は何食わぬ顔でいたずらを続けている。 リカルドにウニのパスタ、加賀美の前には四種のチーズリゾットがサーブされ、ウェイターが一礼して出ていこうとしたところで加賀美がフォークを落とした。 もちろんわざとだ。 振り向いたウェイターが素早く替えのフォークを差しだし、何食わぬ顔で「ありがとう」と加賀美は受け取る。 足先のいたずらはまだ続いている。 くにくにと器用にそこを揉まれて、リカルドは腹筋に力を入れた。 ウェイターが床にかがんだら、テーブルの下の不埒なお遊びに気づくだろう。 もちろん気づいたところで上流階級の破天荒な振舞いに慣れたウェイターは何も言いはしないだろうが、露出の趣味はないリカルドとしては避けたい事態だ。 目線だけで焦るリカルドに加賀美は涼しげな笑みを見せて、足の指でさらにくいくいと押してくる。 ウェイターがしゃがんだところで、間一髪、するりと足を引いた。 同時にウェイターがフォークを拾い上げ、そっと部屋を出て行く。 「まったく君は…」 リカルドが大きく息をついた。 加賀美はしてやったりと黒い目をきらめかせる。 「ドキドキしただろ?」 今度は左手をテーブルの下に突っ込み、遠慮なくそこを確かめた。 半ば勃ちあがったふくらみを愛おしげな手つきで撫でさする。 「ほら、興奮してる」 これ以上はない魅惑的な笑みを浮かべて、まるで悪びれた様子もない。 額を押さえてリカルドは呻くように呟いた。 「頼むからこれ以上煽らないでくれ」 「何言ってるの、お楽しみはこれからだろ」 リゾットを上品に口に運んで、加賀美はいかにも楽しげに笑う。 「まだ魚も肉もデザートもあるよ」 食事の間じゅう、こんないたずらを続けるつもりなのか。 リカルドは嘆息して、天井を見あげた。 ずいぶんと刺激的なディナーになりそうだ。 帰りの車で、船を下りるときに貰った包みをリカルドに差し出した。 「はい、これ」 「君のでしょう」 一瞥したリカルドは受け取らない。 「チップ出したのリカルドだろ」 「掛けたアキトのものだよ」 換金したチップは200万円近い金額になった。 金の押し問答なんてスマートじゃないやり取りはしたくない。 加賀美はうなずいて「じゃあ、これで今度デートをしよう」とにっこり笑った。 「それは楽しみだ」 リカルドが鷹揚にうなずくのに、加賀美はいたずらっぽく囁く。 「次はもっと刺激的なことをしようか?」 「君といると落ち着いて食事もできないな」 「楽しんだくせに」 「そうだけどね」 あの後、メインを食べる間じゅう、加賀美は器用な足でさんざんリカルドを焦らしたのだ。 そして最後はテーブルの下に潜りこんで奉仕してくれた。 デザートを呼ぶのが少々遅くなったのはそういうわけだ。 「きれいな顔してこんなに性悪だとは思ってなかった」 小悪魔の次は性悪と来た。 「でも嫌いじゃないでしょ、こういうの」 楽しげに笑う加賀美のネクタイを引き寄せて、リカルドは熱っぽく口づける。 「ああ。きれいで性悪でフェラが上手いなんて最高だな」 「お褒めに預かり恐悦至極」  澄ました顔で加賀美が微笑む。 「またね、リカルド」 部屋に戻った加賀美はテーブルに金の入った封筒を置き、シャワーを浴びた。 さあ、この金で何をして遊ぼうか。 あぶく銭はそれらしくぱーっと使わないと。 「彼、どうだった?」 「ん? どの彼?」 「相変わらずだな。あの日本人だよ。もう寝た?」 「ああ…。寝てないよ」 「あれから2週間も経ってるのに? 逃げられたか?」 「いや、3回デートした」 「ああ? デートぉ?」 ミケーレが眉を寄せ、うろんな目つきになる。 「お前、何やってんだ?」 いつもの早食いっぷりを知っているミケーレは、信じられないと言いたげだ。 「あの日はキスして泊まったけどそれだけで、2度目は船上パーティに連れて行って、この前はオペラを観たよ」 「なんだそれは。3回も会ってキスだけ? そんなにガードが堅いのか?」 「いや全然。迫ればいつでも寝ると思うけど」 加賀美のガードなんてあってないようなものだし、正直に言うならキスは唇にだけではないのだが、それはもういいだろう。 「じゃあ何やってんだ?」 「何だろう。…恋愛ごっこかな?」 「恋愛ごっこ? 恋人のふりって?」 「ふりというか、デートしてキスして食事して…。意外と楽しいぞ」 加賀美はどこに連れて行っても、微笑んでいるだけで人目を惹きつける。 きれいな顔立ちだが、どこかやんちゃそうな子供みたいな雰囲気がある。 きらめく黒い瞳で見つめてくるのに、口を開けば人を弄んではぐらかす事ばかり言う。 「へえ…。何か高価なものでもねだってくるとか?」 「そういや、それはないな」 スーツを数着押しつけたが、加賀美が何かをねだったことはない。 「へえ。健全なおつき合いってわけか」 「さあ…」 どちらかと言えば不健全なおつき合いの気がするが、ミケーレの誤解を解く必要はない。 「それでオペラは何を観たんだ?」 「彼の寝顔を」 「はあ?」 「仕事で疲れてたんだろうな。僕にもたれてぐっすり」 「お前、正気か?」 「楽しかったよ。きれいな顔だと思ってたけど、寝顔はけっこう可愛くて」 劇場で見た彼のブラックフォーマルはとてもストイックな感じでぞくぞくするくらいの色っぽさだった。 やはりあのジャケットにしてよかったとリカルドは内心で自画自賛した。 フルートグラスでシャンパンを飲んでいる姿にたくさんの視線が集まっていたが、彼はまったく気に掛けず「これおいしいね」とチーズを指で摘まんで食べ、挑発するようにリカルドの視線を捉えてぺろりと指先を舐める。 そんな粗野な仕草も許されてしまう。 そして開演後すぐに、彼はリカルドの肩に頭を乗せてきて「眠っちゃいそう」とつぶやいた。 「寝ても構わないが」 「じゃあこっち」 椅子の位置をずらして、ごろりと膝枕で横になってしまった。 もちろん何年と押さえっぱなしの専用席だから外からは見えないが、大胆な行動に目を丸くした。 そんな無作法をしても、彼の振舞いはどこか優雅で下品な感じがしない。 そっと髪をなでると唇を上げて微笑み、まったく頓着せずにすうすうと眠ってしまった。 舞台そっちのけでリカルドはたっぷり寝顔を堪能した。 驚いたのは帰りの車のなかで、加賀美が「恋とはどんなものかしら」を歌ったことだ。 コロラトゥーラも上手にハミングで真似をして無邪気に歌う。 それはわざと? この歌詞の意味を知っているのか?  「聴いていたのか?」 「んーん、寝てたよ。でもこれ、店でよく流れてたから覚えてる」 日本で勤務していた店のオーナーは熱心なオペラファンで、いつもフロアでオペラを流していた。 意味は知らないけどと屈託なく笑って「リカルドの膝枕は気に入ったよ」なんて言う。 「アキトは僕を焦らしてるのか?」 「いや、ちがうよ。熟成してるだけ」 最初に会った時を思い出した。 肉もワインも熟成させるとうまくなると加賀美は言った。 リカルドの気持ちを熟成中ということだろうか。 「僕を弄んで楽しい?」 「とてもね」 悪びれずに答える彼が憎らしい。 計算しつくしたような無邪気な顔を見せる加賀美にリカルドは振り回されている。 いや、振り回されている振りで楽しんでいる。 加賀美は遊び慣れた男で、金にも地位にも執着していないことが何度か会っているうちに分かった。 昨日は日本から「幻の銘酒」と名高い日本酒3本とワインが3本、リカルドの元に届いた。 きっとあの金で買ったのだろう。 単なるプレゼントだとは思えないから、一緒に飲もうなのか飲ませろなのか、それとも別の意図があるのか謎解きをしているところだ。 「お前がそんなに気に入ってるなんて気になるな。今度会わせろよ」 ミケーレは興味津々という顔で迫った。 「ああ、そのうちな」 そう答えたけれど、会わせるつもりは全くない。 あのきれいな生き物は結構手強い。 恋人の性別に頓着しないミケーレに会せたりしたら、とんでもないことになりそうだ。 「ごちそうになってばかりじゃ悪いから、次回は俺が招待しようかな」 いたずらっぽく囁かれたのは5回目のデートだった。 これっぽっちも悪いなんて思っていない態度でうそぶく加賀美に、リカルドは警戒しながらも乗ってしまう。 「それは嬉しいね。どこの店?」 「リクエストは?」 そう尋ねられてリカルドは考えた。 そんなことを考えたことは今までなかった。 秘書や執事がいつも手配していたから、自分で店を選んだことなどない。 リカルドはそこまで食事にこだわりがなかった。 黙って座って待っていれば、それなりのものが出てくる環境で生きてきたから。 加賀美はリカルドがどんな返答をするか試しているようだ。 だけど、どんな店名をあげてもしっくり来る気がしない。 「…アキトが選んだとこならどこでもいいよ」 「かしこまりました。ご予約しておきます」 口元だけで微笑んで、加賀美はいたずらな表情で頬に優しくキスをした。 簡単に請け負った加賀美に、当日、連れて行かれたのは意外にも彼の自宅だった。 古いアパートだけれど日当たりがよく、キッチンは最新式のものにリフォームされていた。 前に住んでいたのがやはり料理人で、このキッチンを見てここに決めたと言う。 カジュアルな服装でと言われたのはこのためか、とエプロンを渡されて理解した。 「僕も作るのか?」 「ええ、でも簡単だよ。海苔に酢飯とネタを乗せて巻くだけ」 大きな海苔と新鮮な魚介が用意されていて、平たい木のボウルには白飯が入っていた。 「シャリは少なめに、真ん中に薄く置いて。そうそう、ネタは好きなのを」 「こんなに色々混ぜてもいいんだ?」 リカルドの知る寿司は、ネタは一つしか乗っていない。 海鮮巻には好きなだけ入れていいと説明して、加賀美はサーモン、イカ、エビ、イクラ、玉子焼きなど数種類を豪快に乗せてしまう。 「こうして巻いて。米をつぶさないように強く巻き過ぎないで」 お手本に一つくるりと巻いて見せてくれたので、どんな食べ物か理解した。 まきすを使って巻くが、案外思い通りに巻けない。 酢飯を置く位置と量が重要なのかと手元を見て気がついた。 3本目でなんとか格好がつく巻き寿司になった。 「これでどうかな?」 「ああ、いい感じ」 誉められて思わず頬を緩めてしまった。こんなことくらいで、と自分で驚く。  「食べやすいように切ってもいいし、そのまま丸かじりすることもあるよ」 手でつまんで、切ってくれた巻き寿司を一つ食べてみた。 「うまいな。これは家庭料理?」 「そう。店でも売ってるし、家でも作る」 皿に盛った巻き寿司をテーブルに運んで、リカルドが持参した日本酒で乾杯する。 涼しげな江戸切子の中身は加賀美が贈った日本酒だ。 一口飲んで、それに気がついてにっこり笑う加賀美は、何かたくらむ顔つきだ。 「アキト。これ、単なるプレゼントじゃないんだろう?」 「いや、プレゼントだよ。俺とセットでね」 繊細な切子グラスを傾けるリカルドの手が止まる。 つまり…? まじまじと加賀美を見つめるリカルドに、思わせぶりに微笑んですいっと酒を飲みほした。 「アキト、素敵だ…」 料理人は意外に体力勝負だ。 初めて見る加賀美の裸体に、リカルドはため息をついた。 きれいに筋肉のついた細身の体にリカルドは隅々まで口づけて、舌でも手でも味わう。 加賀美は出し惜しみしなかった。 今まで散々焦らしたのが嘘のように、リカルドの求めに応じて素直に服を脱ぎ捨てた。 どういう気まぐれなのかは知らない。 あるいは何度かデートして「それなりに知り合った」と認定したのかもしれない。 どちらでもよかった。 情熱的な口づけにいくらでも応えてきて、奔放に快楽を得る姿に嫌でも煽られた。 「あ、あっ、リカルドっ…」 喘ぎ交じりに切なく呼ぶと、ぐっと力強く突き上げられた。 焦らした反動なのか、リカルドは性急に求めてきた。 「きれいな色だね」 吸い上げて色づいた乳首を舌先で弄ばれて、加賀美は息を乱れさせる。 「は、あぁ、そこ…」 「ここ? これがいい?」 「あっ、ん、いいっ」 素直に感じて目元を染めた表情が、壮絶なくらい色っぽかった。   リカルドは感じるところを的確に探し当てて、加賀美を何度も揺さぶって高みに導く。 男を抱くのに慣れたリカルドはすぐに加賀美の弱いところを見つけ出し、器用な指や舌で極上の快楽をくれる。 「あ、奥、もっと…」 「奥がいい?」 じれったくなるくらいゆっくり抜き差しされながら、ぬるぬると雫を溢れさせた性器を扱かれて、加賀美は体を揺らしてねだった。 「でもここもよさそう」 「ん、いいから、もっと来いよ」 彼の男らしい体を最奥まで受け入れて、加賀美は熱いため息を何度もこぼした。 昼間の明るい陽射しが差しこむ寝室は、くすくす笑いが響いていた。 リカルドの部屋の大きなベッドの上で、裸でじゃれ合って口移しでワインを飲ませあう。 ここで抱き合うのももう3度目になった。 王子様の髪は乱れていて、色っぽさが倍増している。 リカルドに憧れている女の子たちが見たら失神ものだろう。 さっきまで濃厚にセックスして戯れ合ったベッドのシーツはくしゃくしゃだ。 しどけなく寝そべる加賀美にリカルドが腕を回して引き寄せた。 「ねえアキト、僕とつき合うって言ってよ」 甘えた表情でリカルドが囁いた。 今日あけたワインで加賀美からのプレゼントは終わりだ。 贈った酒は加賀美とセットだと彼は言った。 言葉通りなら、これで終わりということになる。 「ね、Si と言って」 「言わなかったら?」 「言うまで帰さない」 ふふ、と笑って加賀美は起き上がる。 「素敵な口説き文句をありがとう」 「僕は本気だよ」 「そうかもしれないね」 これっぽっちも信じていない顔でうなずく。 「帰さないって言っただろう?」 「ええ。でも今日は早番なんだ」 仕事だと言われたら無理には引き留められない。 自分だって責任ある社会人としての地位はあるし、加賀美にも立場というものがある。 「いっそのこと閉じこめてしまいたいのに」 「そうなったら、俺に興味なんて持たないだろ?」 加賀美はわかっているのだ、リカルドが遊びで声を掛けたことを。 「僕のものになる気はない?」 「きっとすぐに飽きるよ」 「どうしてそう言える?」 「リカルドは手に入った物には執着しないタイプだろ?」 その言葉にリカルドは黙り込む。 確かに今まで、恋愛相手に執着したことはない。 むしろ追いかけられたりしがみつかれると冷めてしまって、すぐに別れることになってしまう。 「リカルドは狩りを楽しみたい人だから、俺みたいにふらふらしてると気になるけど、手に入れて鳥籠に入れてしまえば世話を忘れる。違う?」 「鳥籠から勝手に出て行きそうな君の世話を忘れるなんてことはないと思うよ」 苦笑とともに本音を漏らす。 「そもそも大人しくそこに入っている気も、お世話される気もないくせに」 ふふっと口元だけで笑うと、加賀美はちゅっと口づける。 そのまま腕を回して、濃厚なキスを仕掛けてくる。 堕ちてくる気もないくせに、そういうことだけはするんだな。 「もう一度抱きたい」 ストレートに口に出してみれば「いいよ」とあっさりうなずく。 「だからつき合って」 加賀美は苦笑して、それからかるく首を傾げた。 「まあいいけど。じゃあ覚悟して」 「どんな覚悟?」 「俺は結構、手がかかるよ」 「望むところだね。僕は意外にも手のかかる性悪な子が好きらしい」 ふわりと微笑んだリカルドは、加賀美の手を取って羽のようなキスをする。 そのまま顔を上げると、一瞬で不敵な笑みに変化した。 視線が交錯し、加賀美がふっと口元を緩めてリカルドに抱きつく。 …さあ、ゲームの始まりだ。  完

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