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パーフェクト・ワールド・ハルⅥ-13
「茅野さん。その、成瀬さんと……水城の噂って、知ってましたか」
結局そこかと言わんばかりに茅野は眉を上げたが、行人が発言を取り消すよりも先に話し始めた。
「噂の出どころは知らんが、現場には俺もいたからな。知ってはいるぞ。入学式の準備にも駆り出されていたんだ。寮の歓迎会もあると言うのに、全く人使いの荒い」
大変ですね、と応じて、行人は視線を手元に落とした。写真。自分には見たことのない顏。それを嫌だと思うほど、己惚れているわけでもないけれど。
「安心しろ。確かに水城は、『ハルちゃん』らしい含みを持たせたことを言ってはいたが、――成瀬の方は至っていつも通りだ」
「え……?」
「あのしれっとした顔で受け流していたからな。そう言うことだろう」
年長者の顔で頷いて、茅野が行人の頭を一撫ぜした。
「だから、言っただろう。本当であれ嘘であれ、当人が示すことがすべてだ。直接聞かない限りは判断できる根拠はそれだけだからな」
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