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パーフェクト・ワールド・ハルⅥ-12

「あっと言う間に、また三年過ぎ去るぞ」  茅野には珍しい調子に顔を上げれば、真面目な横顔があった。 「成瀬もよく言ってるんだがな。この学園にいる間だからこそ、出来ることもあるんだろう。良くも悪くも、この塀の中は異世界だからな」 「異世界?」 「理不尽なこともあるだろうが、――なんと言うか、そうだな。俺も他の学校に通ったことがあるわけではないから、実感として分かっているわけではないが、やはり、ウチの学校のように生徒の自治権が強いところは少数派で、特殊だと思う。特に、この国ではな。全寮制のウチだからこそ叶えられている世界だ。まぁ、成瀬は……いや、これは俺が言う話でもないな。つまり、変えようと思えば、変えることが出来ると言うことだ。おまえにもな」  それは、一人の編入生の出現で危うくバランスを崩しそうになっている今への苦言だったのだろうか。それとも、自分に向けられる視線くらい、自分の力で変えて見せろとの、先程に続く発破だったのだろうか。 「お、出てきたぞ。最近は印刷することなども滅多とないからな。だが、形に残るものも悪いものではないか」  鈍い音を立てて排出された、ポラロイド写真ほどの大きさのそれを一見して、茅野が笑った。 「確かに、珍しく邪気のない顔をしているな。おまえは良くあいつを見ている、本当に」 「珍しく、って」  困惑気味に声を零した行人の手のひらに、出てきたうちの一枚を置いて、茅野が言い足した。 「誤解のないように言っておくが、友人としてなら俺はあいつのことを気に入ってはいる。まぁ、面倒なヤツだと思っていることも事実だが。……この学園中あいつの外面に騙されているうちは、どうにもならんとも思えば、多少、気の毒でもあるか」  誰が、とも、なにを、とも言わないまま、茅野が画面を指さした。 「他はどうだ? ――あぁ、このあたりで良いか。これも有りだな。しかし、勿体ないな。黙っていれば、美人なんだがな」  次々と選択していく茅野の声を聞きながら、躊躇いがちに口を開く。

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