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パーフェクト・ワールド・ハルⅥ-11
「あ……」
見慣れない顔の写真に混ざって、一枚。オフショットの様相で並んでいたそれに、行人のスクロールさせていた指先が止まった。フレームから切れているのは、向原だろうか。自分には見せないような、大人びていない笑顔。
「欲しいのがあったら、やるぞ。ご褒美だ」
「あ……、いえ」
「まぁ、ゴールデンウィークが明けたら、すぐにみささぎ祭だ。それが終われば、多少はゆとりが出るさ。いろいろと手伝ってくれて助かった。悪かったな」
「楽しかったですよ、俺も。高藤とか荻原は俺の比じゃなく大変だったとは思いますけど」
役職を持つと言うことが大変なのは、同室者を見ていると良く分かる。中等部のころから、よくやらされているが、それでも、あまり不平を零さないのも、なんだかんだで及第点以上の成果を上げてしまうところも含めて、高藤の能力なのだろうが。
「あまり、こう言うことをしたことがなかったので、それこそ役に立ったかどうか分かりませんけど」
「何事も経験だ。おまえは責任感もあるし、気も回る。なにより、ちゃんと最後まで仕事をこなしてくれるからな。それが一番だ」
仕方ない、これでも印刷して柏木を懐柔するか。後半は独り言の調子で呟いて、また新たな小ぶりな機器をパソコンに接続させている。一体、どこから借りてきたのだろうとの疑念が沸いたが、知らないままでいようと決めて、行人はマウスから手を離した。
「おまえは表舞台に出るのは嫌いなのかもしれんが、それで可能性を潰すのも勿体ないだろう。嫌じゃなければ、いろいろなことに挑戦してみたら良い」
画面では、まだ写真データが並んでいて、見るともなしに眺めていると、苦笑が落ちてきた。
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