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パーフェクト・ワールド・ハルⅥ-10
「これ、って……」
「あぁ、まぁ、たいしたものじゃない。ミスコンのステージで流す写真を選んでいてな。柏木とやるつもりだったんだが、いつまで経ってもあいつがやる気にならんのだ。かと言って、俺一人で選定するのもつまらんからな」
なんとなく、柏木がやりたがらない理由が行人には分かる気がした。行人としても積極的にやりたくはないが、どちらにせよ、本番になれば直接見ることになるのだ。高藤に言わせるならば、いきなり見るより慣らしておけ、となるはずで。
「流すって、この写真をですか」
「あぁ、と言っても、べつに写真じゃなくても良いんだがな。葵は確か、一発挽回狙いでショートムービーを作って流すと言っていたぞ。中間発表はまだ先だが、ここだけの話、ウチと楓の一騎打ちになっているからな。柊は最早、乗り気じゃなさそうだが、葵はまだまだやる気だな」
「ショートムービー……」
どこのアイドルだと思ったのが伝わったのか、茅野が肩を震わせた。
「ちなみに、おまえが水城と出ていたら、音楽をバックに踊って歌っていたからな。五分間ならなんでも有りだからな、あのステージは。目立った者勝ちだ」
そうだった。そうなのだ。ステージ上で、司会者による質問コーナー、アピールコーナー。そして、そこからの外部来場者の投票、集計。事前に集計されている学部生の投票と合わせて、みささぎ祭のラストに結果が発表されることになるわけだが。
「成瀬さん、どうなんですか」
「どうって、……そうだな。まぁ、おまえが心配することも気に病むこともなにもない。あいつはプライドだけは高いからな。中途半端なことはしないだろう」
それはそうかもしれない、と分かってはいるのだけれど。けれど、嫌じゃないのだろうかと、やはり案じてしまう。
「だから、安心して笑って見ていたら良いさ。精々、笑ってやれ。その方が、あいつの気も晴れる」
それで、写真はどうだ、と。茅野が画面を覗き込む。おされるようにして、行人はずらりと並ぶそれをスクロールさせた。並ぶ写真はプロが撮ったことを差し置いても、圧巻だ。造り込まれた表情ではあるけれど、「美人」だ、とは思う。けれど。
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