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パーフェクト・ワールド・ハルⅦ-8

「分かる気がする」 「え?」 「俺も昔、中等部に入ったばかりのころかな、高藤のこと嫌いだった」 「なんで?」 「成瀬さんに可愛がられてるから」  その応えに、四谷の顔から険がぬけて幼くなる。言葉にしてみれば、似ているとしか言いようがない。 「性格悪いだろ。今は、まぁ、……嫌いではないけど」 「嫌いではない、けど? どう思ってるの?」 「お節介なお人好し」  アルファの多い特別進学クラスの中でも目立つような、そんな男なのに。力を誇示することもなく、いつも落ち着いた雰囲気を纏っている。そうでなければ、きっと、隣にいることは、もっともっと苦痛だったはずだ。相いれることのない、性差がある。それは、高藤が良いヤツだから、だとか。そう言ったことで消えるものではない。けれど、それでも、自分はアルファだと全身で主張しているようなタイプよりは、はるかにマシだ。 「そのうち、ガチで胃に穴開けるんじゃねぇかなって心配してる。ここ数日は」  最後は苦笑気味に告げた行人の顔を、じっと見ていた四谷が小さく息を吐いた。 「俺も、そう思えるようになったら、変わるのかな」  出来たヤツだけど、完璧な人間なんかじゃないから。言いかけて、口をつぐむ。俺が言うようなことではないし、言われて気持ちの良いことでもない、と思う。  そして、ふとした既視感を覚えて、あぁ、と得心した。茅野さんが俺に成瀬さんのことを評するときのものに似ているのだ。  ――つまり、そう言うこと、なんだろうけど。

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