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パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 2-17
この歪なバランスの学園を、内側から歪だと糾弾する存在。それが、いるはずのない――それでいて絶対的に庇護されていたオメガで、成瀬が甘い顔をする「年下」の「弱い」存在であれば、なおのこと。
直接、本尾が潰そうとしても、こうはいかなかっただろう。だから、あの男も、体よく利用しているのだ。
「ちょうどよかった、ね」
「そう。おかげで、必要以上に俺が損な役回りをする必要がなくなった」
もの言いたげな視線は無視したまま、淡々と言い放つ。
「べつに、出方次第では潰してもよかったんだけどな。そういう意味では、あの一年は、成瀬に感謝したほうがいい。あいつが春の時点で潰す気でいたら、もうここにいなかった」
「かわいそうに、水城も」
嘲っているふうでもない、どちらかと言えば言葉どおりに若干憐れんですらいる調子だった。
「いっそのことはっきり言ってやれよ、おまえ。まったくなにひとつとして、きみに興味はありませんって」
そもそも、おまえ、オメガのフェロモン盾に迫ってくるやつ嫌いだろ、と知ったような顔で言われたそれに、同じ言葉を選んで返す。
「かわいそうだろ」
「おまえが言うか、それを」
「年下には優しくしてやらないと。うるさいやつらが多いからな。しかたない」
「……おまえのそういうとこは本当にどうかと思う」
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