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パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 2-16

「それこそ、いまさらだろ」 「そうだけど。殴られてやる程度で済めばラッキーだと思ってんのか、その程度で済まなくてもべつにいいって踏んでんのかも知らねぇけど、いくらあいつが良くても、見てるこっちがさすがに気になる」 「おまえ、そういうとこ人間できてるよな」 「人間できて……って、あたりまえだわ。というか、あいつが規格外すぎんの、いろいろと」  おまえも規格外だけど、と言いつつ、それに、ともうひとつの懸念をこぼす。 「風紀は風紀で妙に大人しいし」  水城を追い払って以降、目立った動きのひとつも取っていないことが、気にかかっていたらしい。 「あいつ、昔から、なにもしてない顔して、最後に一番おいしいとこしらっと取ってくからなぁ」 「まぁ、そうかもな」 「なぁ」  おざなりな相槌をものともせず、会話を続けてこようとする。しかたなく、向原は問い返した。 「なんだよ、次は」 「おまえ、なんで、水城のこと、ここまで放っておいたわけ? 前聞いたときは、なんか似非くさいこと言ってたけど」  真面目に尋ねてきているらしい顔を一瞥して、かすかな笑みを浮かべてみせる。いまさらだったからだ。もう事態は転がるところまで転がりきっている。 「物事を動かすには、ある程度の悪ってやつが必要だからな。ちょうどよかったんだ」

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