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パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 2-15

「聞く気ゼロだったけどな」 「成瀬だしな。……でもって言うと、おまえはいい気しないと思うけど、榛名にとっては成瀬がいてよかったんだと思うけどな。そうじゃなかったら、今、あんなふうに元気にしてないだろ」  それも、最初から関わるなって言ってたんだけどな、ということは口にしないまま、視線を向ける。非難が含まれていると思ったのか、「だって、そうだろ」と篠原がわずかに苦笑をこぼした。 「そこくらい認めてやれよ。多少の面倒はあってもおさまった話だし、直接会いに行ったハルちゃんの行動力には恐れ入ったけど、それでなにができるってわけでもなし」 「べつに」  ただ、呆れていただけだ。  オメガと関わって、ろくなことになるのか、と、ずっと忠告はしていた。その忠告に従わなかったから、ろくでもない結果になっている。  向原には、悪気のかけらもない分、榛名のほうが水城よりも性質が悪く見えていた。 「どっちかって言うと、俺は、成瀬が現在進行形で敵つくりまくって遊んでることのほうが気になんだけど」  そう言えば、夏季休暇に入る前にも、生徒会室で何度かやり合っていた。言っても聞かないとわかっているのに、律義に苦言を呈していたあたり、本当に無駄に人が良い。 「休みの前に笑って言ってたの、絶対、本気だぞ、あいつ。向こうが先に手ぇ出してくれるまでの待ちの態勢に完全に入ってるし。本当、そういうとこ性格悪い」

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