797 / 1144
パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 3-1
[3]
人を好きになるのはどういうことか、という問いの答えが、何日過ぎても、結局わからないままでいる。
「成瀬さんさぁ、榛名に余計なこと言ったでしょ」
新学期が始まってからというもの、放課後は生徒会室で皓太に業務を引き継ぐことが、あたりまえの日常になってしまった。
その作業が一区切りついたところで切り出されたそれに、成瀬は改めて隣に座る幼馴染みに意識を向けた。
自分たち以外に人がいないから気を抜いているということであったのかもしれないが、拗ねているというよりも、はっきりとした不満を秘めた表情をしている。
感情のマイナスを顔に出すことの少ない幼馴染みにしては、いささか珍しい態度だった。
――行人に関することだと、皓太はけっこう表情に出るなぁ。
当人を前に出してやっているのかは、行人から聞いた話から判断するに怪しいような気はするが。
ほほえましいという雰囲気をにじませると、話をこじらせてしまいそうだったので、できるだけなんでもないように成瀬はほほえんだ。
「どれのこと?」
なんのことって言わないあたり、性格悪いな、くらいのことは思っていそうな顔で沈黙していた皓太が、諦めたように小さく嘆息する。
「どれっていうか、……いろいろあるけど、その『生徒会入ったら』みたいなこと」
ともだちにシェアしよう!