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パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 4-8
それもまた容易に想像のつく話だった。
「だろうな」
「簡単に殴られてやるやつでもないし、やられたらやり返すんだろうが、それもまぁ、本当にやられっぱなしは性に合わないというプライドだけの問題で、べつにどうでもいいんだろうな、あれは」
にじんだやるせなさが、夜の寮の廊下に沈んでいく。壁にもたれたまま、向原はそっと息を吐いた。
自分の言動に対して、そういう声を出される理由を、わかろうとはしないのだろう。
「昔から、そうだ」
いちいち腹を立てるのも馬鹿らしくなる程度には、昔からなにひとつ変わらない。応じた声は、そんなつもりはなかったのに、諦め半分の調子になってしまった。
こぼれた舌打ちに、おまえまで必要以上に溜め込むなよ、と言って、茅野が笑った。
*
体制が変わるなら、人員増やしたほうがいいはいいだろうな。
自分以外に誰もいない生徒会室で仕事を片づけながら、向原はそんなことを考えていた。
そもそも最低限に絞っていたのは成瀬の意向であって、生徒会全体の意向であったわけでもない。そういう意味では役員の顔ぶれが変われば、変わっていくのだろうが。
――それにしても、榛名ね。
人員不足の補填で入れたいという話を聞いたときは、どうかと思ったが、身内びいきもここまでくれば、さすがとしか言いようがない。
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