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パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 4-7
「そのあたりはお互いさまだろう」
皮肉をあっさりと笑い飛ばしてから、ふと思い出したような調子で茅野が苦笑した。
「成瀬もな。そういう思考の十分の一でもいいから持つようになれば、多少は変わる気がするんだが」
ちらりと視線を向けると、茅野が苦笑いのまま額のあたりを指で叩いてみせた。
「なかなかだったぞ、このあいだも」
「あぁ」
「自分を大事にする気がないということを、よくよく思い知った気分だ」
元からわかっていたことだけどな、といかにも呆れたように笑うのにつられて、少し笑ってしまった。それも本当にそのとおりで、幾度となく思い知っていることだったからだ。
「いいのか、笑いごとで」
「笑いごとだろ。そんなもん、やられるほうが悪い」
即座に切り捨てた反応にか、茅野がまた笑った。今度はどこかおかしそうに。
「ひっくり返せないと判断した時点で、びっくりするくらい無抵抗だったぞ」
黙ったままのこちらを気にするでもなく、おまけに、と聞いてもいない情報を寄こしてくる。
「そのあとも、かたちばかりの文句は言っていたが。まぁ、いいけど、以外に本気でなにも思ってなさそうだったしな。さすがに気になって、『気を抜きすぎじゃないか』と言ったら、よくわかっていない顔をしていたが」
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