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パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 4-12

 本当に、心の底から馬鹿らしい。そう呆れながらも、そうかもな、と相槌を打って片づけを始める。  思うところなんて、いくらでもある。この数週間の話ではなく、もうずっと前から。  けれど、なにも言う気はなかったのだ。言ったところで、なにも響かないだろうし、意味はないとわかっていたから。  意味が出るとしたら、本人が自覚して動いたときだろうから、と、そう。  だから、なにも知らない顔をしてやっていたのに。溜息を呑み込んで、向原は立ち上がった。 「帰る?」  それもまた、いつもどおりに取り繕われた問いかけだった。同じ言い方を選んで、言葉を返す。 「切りがいいからな。篠原も戻ってくるんだろ」 「そう。あともう少しだと思えば馬鹿な業務量にも付き合えるって言ってた。ありがたいけど」 「よかったな」  そう笑ってから、おまえさ、と向原は呼びかけた。先ほどまでとなんら変わらない調子で。 「誰でもいいにしても、選ぶならもう少しまともなアルファにしろよ」  ほかにいくらでもいるだろうに、と呆れたことも事実だし、茅野をあてにしたときのほうがよほどマシだろうとも思った。 「自分が優位に立てるって高括ってんだろうけど、その目論見が外れたらどうなるかくらい考えて動けば?」

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