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パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 11ー10
そういった冷めた目を、ずっとしているやつだった。
なんでも持っていて、なんでもできるから、なにもかもをつまらないと思っている、傲慢なアルファの見本のような男。
息を吐くように他人を操ることはあっても、他人に意志を強要されるようなことは有り得ない。自分がしたいことをしたいようにしているだけで、自分がやりたくないことは、梃子でも動かない。
そういう男だったから、「お互いさま」、「都合が良い」、「利害の一致」で、済ましていたはずだったのに、いったいどこで違ってきてしまったのか。
「……そのままでよかったのにな、本当」
これも、幾度となく思ってきたことだった。篠原も茅野も、向原も自分も変わったと言う。まるくなって安心したと言うし、よかったと笑う。
けれど、自分はよかったとはまったく思うことはできない。返せるものもなにもないのだから、本気なんて見せないでほしかったし、期待なんてしないでほしかった。
そうだったら、ここまでにはならなかったに違いないのに。
鬱屈とした気分のまま、取り出した薬を呑み込む。週末にはまた病院に顔を出さないといけないと思うと、それもまた気が重かった。
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