1078 / 1144
パーフェクト・ワールド・エンドⅣ 4-6
いや、俺が心配することじゃ、本当にないんだろうけど。自分自身に内心で言い聞かせてみたものの堪えきれず、行人は今度こそ溜息をこぼした。
校内を歩いて、仮に姿を見かけたところで、なにを言っていいかもわかっていないのに。
……なにやってんだろうな、俺。
もう一度溜息を吐き、うつむいたまま廊下を進んでいた行人だったが、人にぶつかりそうになって、慌てて立ち止まった。
「すみませ……」
顔を上げた瞬間、謝罪の言葉が途切れる。予想外の相手で、ひさしぶりに間近で接した相手だったからだ。
――なんで、気づかなかったんだろ……。
向こうが自分に興味はないとわかっていても、お互いの自衛のために、用事がない限り、強いアルファには近づかないようにしていたのに。注意力が散漫になりすぎていたとしか思えない。
「向原先輩」
ぎこちない呼びかけに、呆れたを通り越した嫌そうな視線を返された気がしてしまった。とは言っても、表情が変わったわけでもなかったので、自分の思い込みの可能性も拭いきれないのだが。
ともだちにシェアしよう!