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パーフェクト・ワールド・エンドⅣ 4-9
「なんか、茅野さんにも言われたような気がしてきたな……」
たしか、春ごろに。期せずして、あれも四谷と喧嘩をしていたときのことだった。休日の食堂で、四谷に食ってかかっていた自分に、詳しいことは聞こうとしないまま、そんなふうに励ましてもらった。
そうして、みささぎ祭の準備を通じて、少しずついろんな関係が変わった。なんだかこれも、すごく昔のことみたいだ。
窓から視線を外し、行人は再び歩き始めた。どうせ、高藤はまだ帰ってこないのだ。それならば、寮の部屋でひとりで頭を冷やしたほうがいい。
みっともないところを見られたいわけでも、付け込まれたいわけでもないのだから。
たぶん、昔の自分は、喧嘩早いところがあったことは認めるし、今もなくはないけれど、それでも、もう少し「不機嫌な顔」でポーカーフェイスを気取ることができていたのではないかと思う。
ひとりで戦わないといけないと思っていたからだ。
もし、今、その「不機嫌な顔」の仮面が上手につけることができなくなっているのだとしても、それを、ひとりで戦うことができなくなった弱さだとは思いたくないな、と行人は思った。
まったくうまくできていないけれど、それどころか相手を傷つけているのかもしれないけれど、でも、誰かを頼ろうと考えたことは、絶対に、間違っていないはずだから。
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