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パーフェクト・ワールド・エンドⅣ 4-8
「すみません。えっと、……その、苛々させて」
気分の悪いものを見せて、というほうが正しいのかもしれないが、その言葉を選ぶと卑下が過ぎてしまう気がした。
それに、この人、同情を煽ってアルファに媚びるような言動自体が嫌いそうだし。完全に、行人の私見でしかないが、中らずと雖も遠からずだと思っている。せめてという気持ちでどうにか下を向かないでいると、小さく溜息を吐かれてしまった。
「同情されたいのかって言ったんだ。違うなら、人目のあるとこでくらい、なんでもない顔しとけ」
付け込まれるだけだと続いた台詞は、嫌味でもなんでもなく――むしろ察しの悪すぎる人間に向けての忠告のようにも聞こえて、半ば無意識でこくりと頷く。
「あ、……はい」
声に出たあとに、これはこれでものすごくみっともない返事だったな、と行人は思った。慌てて、気をつけます、と頭を下げる。
完全に呆れられたのか、それ以上を言っても意味がないと匙を投げられたのか。理由は定かでなかったものの、予想外の交流はそこで途絶えた。もういっさい興味はないというふうな態度で歩き去って行った背中から視線を外し、そのまま窓のほうを見る。本当になんとなくの行為だった。窓の外にも、とくに気になるものはなにもない。遠くに見える寮を眺めたまま、ぽつりと行人は呟いた。
予想外が続いたせいか、湧きかけた涙はいつのまにかどこかに引っ込んでしまっていた。
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