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パーフェクト・ワールド・エンドⅣ 6-6
誰もいないところでひとりでサボってて、なにかあったほうが、俺は嫌だからね。そう、なんでもないふうに続けて、そこでようやく四谷は行人を見た。
「どうするの?」
「どうするって……」
「だから、俺の行き先はわかったでしょ。教室に戻りたかったら戻ったらいいし、生徒会室にでも行きたかったら行けばいいじゃん。榛名にはサボる場所あるでしょ」
なんだか、それは、自分には戻る場所があるだろう、と言われているみたいだった。自分の考えすぎかもしれないけれど。
行人にとって、四谷は嫌いな人間だった。嫌味で、自信があって、その自信を笑われない程度の能力があって、自分と同じように小柄で「かわいい」と評される容姿をしていて、けれど、それを卑下することなく自分のために利用して、自分の立場を確立させている。
たぶん、水城とも、少し似ている。自分が苦手だと感じるタイプ。でも、今はそうじゃない。そういう目につく苦手だけではないところを知って、もちろん、やっぱり相容れないなぁと思うこともあるけれど、それも含めて、友達だと思っている。少なくとも、行人は。
足元に落としそうになった視線を堪え、行人は希望をはっきりと言葉にした。
「俺は、……四谷と話したい」
「そう」
自分にはない、と切り捨てられたなかったことにほっとしたものの、四谷の視線はするりと行人から逸れていった。保健室の扉を見つめたまま、答える。
「じゃあ、一緒に来る? 頼んだら、たぶん、相談室くらい貸してくれると思うけど」
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