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パーフェクト・ワールド・エンドⅣ 6-18

 抱え込んでしまう四谷の気持ちは、行人にはよくわかる気がした。自分の嫌なところを自分の好きな人に知られたくはないし、「べつに、そんなこと、言えばいいだろう」なんてことは第三者だから言えることだと思う。  でも、水城の気持ちは考えてもわからなかった。自分の抑制剤を盗ったときは、わかりたくはないけれど、意図はわかった。だが、今回のそれは、――行人に想像力が足りないだけかもしれないけれど――面白がってちょっとからかっているだけ、というふうにしか思えなかったのだ。  それが理由と言われてしまえば、それまででしかないのだけれど。 「引っ掻き回したいからだろ」 「です、よね」  なにをあたりまえのことを、と言わんばかりの声が紡いだ返事は、行人の想像と大差のないものだった。そのとおりなのだろう。けれど、じゃあ、どう割り切ればいいのだろう。そう思ったことが伝わったのだろうか。淡々とした教示が続く。 「それが嫌なら、引っ掻き回される隙を作らないようにするしかない」 「……ですよね」 「それか、文字通り叩きのめして追い出すか」  どちらかしかないだろうというふうなそれに、行人はどうにか頷いた。共存するために強くなるか、追い出すか。言っていることはわかる。でも。

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