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パーフェクト・ワールド・エンドⅣ 7-14

「時間取ってくれてありがとう。実は、最悪、『じゃ』で部屋に戻られるかもって覚悟してたんだよね」  寮室で話を切り出した四谷の第一声に、苦笑を返す。はじめに座るかと聞いたのけれど、本当にそんなに時間は取らないからと断られてしまったので、立ったまま向き合う向き合うようなかたちのままだ。  同じ空気を和らげるような調子で、軽口を選ぶ。 「そんなに冷たそうだった?」 「そんなことない、優しいよ。……いや、でも、どうだろ。優しいと思うけど、誰にでも公平だと思ってたっていうほうが正しいのかな。わからないけど」  小さく笑って、四谷は続けた。 「ほら、高藤、苦手な人にでも態度変えないでしょ。だから、ずっと誰にでも優しいんだって思ってて、……というか、そう思いたくて、だから、そう思ってたんだけど」  態度を変えないのは、のちのち自分が面倒になるからで。優しいわけではなく、倣った処世術だった。そういう意味で、公平と評されたほうがたしかにまだ正しいのだろうな、と思う。肯定も否定もせず笑みを刻むと、またひとつ四谷も笑った。 「でも、高藤、榛名にはそうじゃないもんね。昔から」 「あ、いや、……それは」 「高藤、俺、知ってる。本当に榛名と付き合ってるわけじゃないってこと」  だから、付き合ってるから当然、とか、そういう言い訳はいいよ、と。不思議なほどあっさりと四谷が制する。鎌をかけられているのだろうかと疑った時間は短かった。そういう目をしていなかったからだ。

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