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第1話

 ――俺はもしかしたら「おかしい」人間なのかもしれない。  目が覚めると、そこは暗闇の世界だった。  霧島柊二(きりしましゅうじ)はぼんやりとした思考のまま、いま、自分の身に何が起きているのかを考える。  目が見えない。目蓋に触れる柔らかい感触。タオルか何かで目隠しをされているようだ。  手が動かない。手首に触れる硬い感触。何かで拘束されているようだ。左右の手首を縦に横にと引っ張ってみる。じゃらり。ああ、これは手錠か、と霧島は思った。  そして立ち上がろうにも、拘束された手首が邪魔で、動くことができない。どうやら椅子に座らされているようだ。  霧島は現状を把握する。自分は何者かによって拘束されているようだ。言い方を変えれば監禁されているのだろうか。もしかしたら、自分は命の危機にさらされているのではないか。  だが、霧島は慌てることなく現状を受け止める。  助けを呼ぶために必要な口は塞がれていないが、特に発する言葉も見当たらない。  くだらないことで体力を消耗することは避けたい。何より、騒ぎ立てるほどの窮地だとも思えない。  霧島は元来、そういう男なのだ。  ――さて、どうしたものか。  最後の記憶は友人たちと酒を飲んで――ああそうだ、伴のアパートだったか。  見た目以上にアルコールに弱い伴が真っ先に潰れて、それを嫌々ながら中井が介抱して、それから――そうそう、中井が飲み直そうと度数の高い酒を持ってきて――伴と反対に、中井はザルである。  ――おおかた、中井に潰されたのだろう。  霧島は溜め息をつく。呆れたものだ。あの友人たちの茶番に、まさかこのような形で付き合わされるとは。 「……おい、本当に大丈夫なんだろうな? 霧島の野郎、まだ潰れてるよな?」  生憎だが起きている。霧島はややざらついた声の主に向かって念を飛ばす。 「大丈夫。ちゃんと縛ってあるし、強いヤツ飲ませたからすぐには起きないって」  だから、とっくに起きている。霧島はやや甲高い声の主に向かって、さらに念を飛ばす。  これらの声の主、伴と中井は自分たちの茶番が成功したことに、ひどく喜んでいるらしい。廊下を歩く足音が弾んでいるからだ。まるで子供である。  霧島と彼らふたりとの出会いは、数ヶ月ほど前。  はじまりは奇妙な三角関係だった。

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