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海斗ごめん。ほっとけない
海斗が、ぎりぎりまで離してくれなくて。
タクシーが迎えにきて、ようやく、諦めがついたのか渋々ながらも、見送ってくれた。
家から、車で、三十分くらい。
小、中学校が隣接する文教地区の一角。幹線道路沿いの真新しい三階建のマンションの前でタクシーが停まった。
下りると橘内さんが待っていてくれた。
「一樹さん、結婚するまで、実家暮らしで、みんなやって貰っていたので、早織さんがいなくなり、掃除、洗濯、片付け何一つ出来なくて・・・大体、想像出来ると思いますが、かなり大変なことになってます。貴方が、家庭的な方で良かった」
つまり、相当、散らかってるって事⁉
だから、泊まるって話しになって、焦ったんだ。
「早織さんも、実は、何一つ出来なくて、家の手伝いを全くしてこなかったのでしょう。内緒で、家政婦を雇っていたくらいですから。それと、一樹さん、外で見せる顔と、プライベートの顔、180℃違いますから」
どういう事なのか、全然、分からなくて。
首を傾げてると、行きますよ、そう言われて、慌てて、橘内さんの後を追った。
覚悟して、玄関のドアを開けると、
あれ、普通!?
こじんまりとしてて。
でも、リビングダイニングキッチンに案内された時、あまりの惨状に絶句した。服はあちこちに脱ぎっぱなし、コンビニのお弁当も食べっぱなし、缶のビールの空き缶もあちこちに転がって、ゴミだらけになっていた。足の踏み場もないとは、まさにこの事で。
「槙さんは⁉」
橘内さんに聞くと、ソファーを指差した。
「あまり、寝れないみたいで、休みの時や、時間があるときは、横になっているのが多いんです。びっくりしたでしょう⁉」
「あっ、はい」
大きい体を器用に丸くして眠る槙さん。その寝顔は子供のようにあどけなて。
も、も、も、何か、ほっとけない。
性格直しとけば良かったと、後悔したのも後の祭で。なぜか、母性本能を擽られしまった。
取り敢えず、片付けよう!
この状態なら、他の部屋も、散々たるものだろう。お風呂と、一樹さんの部屋を片付ければ、最低限、生活できるはず。
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