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波乱の予感

「初登庁は、三日後だったな」 「そうです」 「福光派に入るのか⁉」 「福光さんは、父の戦友ですし」 「福光は、狸爺と専らの噂、大丈夫か⁉」 皆木家の食卓に、一樹さんが加わり、おじさんと、政治の話しに花が咲いている。 二人の会話に、僕も、海斗も、全く付いていけない。 「親父の、生き生きとした顔見んの、久しぶりかもな」 「そうなんだ」 一樹さんのお父さんのお見舞いの翌日。おじさんの提案で、一樹さん、うちに引っ越す事になった。その日のうちに、自宅を引き払い、夜には、ごく普通に、家族の一員として、何ら違和感なく溶け込んでいた。 ーー流石だ。 本日の夕食は、一樹さんリクエストの、オムライス。 おじさんと、会話しながら、目下、チキンライスに入っているピーマンとにんじんと格闘中。 「一樹さん、大丈夫⁉」 「う゛~ん」 ーーかなり、苦しんでる。 ご近所の農家さんが、差し入れとして、山のような、にんじんと、ピーマン、たまねぎを置いていってくれて。いつもの倍、オムライスに入れたけど、やっぱ、入れすぎたかな⁉ ーーごめんなさい 「ナオのご飯、おいしい‼」 「顔、ひきつってるよ」 海斗も、呆れてる。 「一樹、大体、取ったから、俺の食べていいよ」 自分の皿と交換した。 いつもの間に、取り除いたのか、小皿にこんもりと、にんじんとピーマンが乗ってた。 「でもさぁ、農業団体が全面的に支持してくれたんでしょ。視察とかあった時、どうするの⁉ 」 ーー確かに 「う~ん」 一樹さん、頭を抱えてしまった。 ちょうど、その時。 橘内さんが、現れた。 顔が険しいから、かなり、ご機嫌斜めかも。 「一樹さん、例の件、ナオさんにお話しされたんですか⁉」 「ん⁉例の件って⁉」 「公設秘書の職を今すぐ辞めても⁉」 大きな溜め息と共に、橘内さん。目が怖い。間違いなく、怒ってる。 「俺、カガミ苦手~。謝るから、もう一回教えて」 「カガミさんって⁉」 初めて耳にする名前だ。 「鏡家は、代々、豪商だった槙家の大番頭を務めてまして、戦後、政治家に転向した槙家に、公設秘書として仕える様になりました。現当主の、礼氏は、一樹さんと同い年ながら、先代の公設秘書を務めてまして、今回、政策秘書として、一樹さんに仕える事になったんですが、はっきりいって、鏡の方が、政治家に向いているかもしれません」 橘内さん、相変わらず手厳しい。

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