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 彼が「嫌だ」って言えば、オレは素直に止めるつもりだった。他に「コレ」っていう案があったワケじゃないけど、彼の嫌がることは強要したくないし、この方法は、相手に嫌がられてゴリ押しすることでもないし。  もし嫌だって言われたら、その時はなんとか別の方法を考えないと、って。  だけど、彼が動かした首の方向は縦だった。  びっくりした。嬉しかった。悲しかった。悔しかった。  そんな、矛盾する、いろんな感情がオレの胸の中に渦巻いていて、多分オレの目からは涙が流れたんだと思う。目が熱くて、頬に何か液体が伝うのが分かったから。  誰かから与えられる言葉で、こんなにも感情が揺れるんだって、彼が初めて教えてくれた。この気持ちを知ったことで、オレは彼の未来を奪ってしまったのかもしれないけど。自分の未来も捨ててしまったのかもしれないけど。  でも、世間が間違ってるって言っても、おかしいって言っても、オレはいろんな感情の中、確かに強く「幸せだなぁ」とも思っていて。  思わず感情のまま彼を抱きしめれば、「苦しい」「暑苦しい」「痛い」なんて不満3連発のあと、彼はそっとオレの胸元に頭を預けてくれた。ちょっとだけずっしりとした重みが、幸福の形なんだろう。「幸せ」。4つ目に告げられたのは不満じゃなかった。

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