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【番外編SS】日本の冬の過ごし方

 日本の冬は寒すぎる。  二人で並んで歩く帰り道。僕の呟きを聞いたトオルが、丸く可愛い鼻先を赤く染めてにっこりと微笑む。 「じゃあ家に着いたら、暖まること……する?」  ジーザス、僕の隣に居るのは黒髪の天使か? 「はぁっ……んっ……よし!」  無邪気に飛び跳ねて喜ぶ彼を横目に、僕は肩で息をしながらへたりこむ。テニスと言ったってゲームじゃないか。ここまでリアルに身体を動かす必要はあるのか?まったく、日本人の執念には毎回驚かされる…… 「ジーン、大丈夫?」  僕の顔を覗きこむ彼の腕を引っ張り、華奢な身体を抱えて床に転がった。「まだ寒い」と言うと、腕の中の天使がクスクスと笑いだす。  嘘。君の笑顔があればどこでだって僕の心には常夏の太陽の光が降り注ぐ。うっすらと汗が浮かぶ額に口づけ、穏やかな波に揺られるままに、僕たちはを互い熱を求めて航海を始めた。  *  柔らかなシャンプーの香りが漂う旋毛に鼻先をうずめる。乱れた後頭部の髪に指を通し、さらさらとした感触を愉しんでいると、トオルは少し眠たそうに潤んだ目――ああ、その目はやめてくれ。性懲りもなく血液が一箇所へ集まってしまう――で僕を見上げた。 「今度、温泉に行ってみる?」そう言ってふわりと笑う。 「今年は寒いけれど、その分近場でも雪が降っていると思うんだ。雪を見ながら温泉に入るのは日本の冬の醍醐味だよ……」  最後の方は眠気に打ち勝てなかったのか、はっきりとは聞き取れなかった。僕の首筋を温かな寝息がくすぐる。僕は細い肩を守るように、毛布を引き上げて包み込む。  きっと雪の中で、君はまた目を輝かせて僕の名を呼ぶ。僕は君に誘われるまま、白い世界へと足を踏み出す。  日本の冬は嫌いじゃない。いつだって君を、こうして暖めることができるから。

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