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第6話
――「愛しい」
嗚呼、なんて愛しいのだろう。
此れが「恋」というものか。
私―俺―にとって、君―手前―が初めての「恋」だ。
――頬に触れる指先が震えている。
――其の指先は吸い込まれそうな程深い、宝石のような瞳から零れ落ちる雫に濡れる。
「泣かないでよ、相棒」
「泣いてねェよ」
――相変わらず嘘が下手だ。
――感情が豊かで泣き虫な君が愛しい。
――感情の表現が下手で廻りくどい遣り方しか出来ない手前が愛しい。
「置いて行って……御免ね?」
――微塵も思って無い癖に。けれど薄桃色に染まる耳朶が此奴の本音だと教えてくれた。
「二度目は無ェぞ」
「お嬢様口調で訊きたいなあ」
「……其れは断る」
「私がこんなに頼んでいるのに?」
「手前、調子乗んなよ」
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