2 / 11
【好き好き大好き】香月美都(かづきみつ)
何故だかそわそわと落ち着かない。
風が騒いでいる。
— はやくはやく —
— けがをしてるよ —
— たすけてあげて —
風に導かれ、森の奥の少し開けたところに全速力で駆けつけると茶色い髪で黒い身体で、顔だけが肌を晒した小さな子がいた。
下半身が無い…?これではすぐに死んでしまう…本当に生きているのか?
「うぅ…」
生きている!早く里に連れて行って治癒してもらわねば!
傍らに跪き、よく見ると2本だけ脚があった。なるほど、脚が2本の種族なのか。そして身体に怪我はなさそうだ。こんな姿の生き物は初めて見るが、怪我はそれほど酷くないようで良かった。
だが頭から血を流し、意識も無いようだ。小さな生き物は総じて弱い。
私は急いで抱き上げて治癒師の元へ連れて行った。
「命に別状はないが、治癒術の効きが悪い。跡が残るかも知れんな。」
「そうか。オメガだから気に病むかも知れないが、私が支えよう。」
「気に入ったのか?」
「気に入ったどころじゃないさ。ほら。」
「!! …そうか。良かったな。」
抱き上げた瞬間に右肩に熱を感じ、見ればトライバルタトゥーが浮かび上がっていた。こんなに目立つタトゥーを前にしても怪我人にしか目がいかないなんて。
仕事熱心な治癒術師に深く感謝した。
…やっと見つけた、私の運命のつがい。
「ん…」
少年が身動ぎしてぽっかりとその目を開けた。ぱっちりとした黒目がちな瞳に心臓が早鐘を打つ。
「ここは…?」
「ここはケンタウロスの里。君は怪我をして森に倒れていたんだ。」
「怪我…」
巻かれた包帯に触れるが、痛みはなさそうだ。
「ケンタウロス………!?」
何かに驚いているようだが、驚くような物があっただろうか?
「ケンタウロス!?」
「何を驚いている?珍しい物があるのか?」
「あ…あなた達が珍しいんです!」
ケンタウロスの里にケンタウロスがいて、何を驚くのだろう?
「ぼくのいた所には人間しかいなくて…ケンタウロスは想像上の生き物とされています。」
「ニンゲン、と言うのは君みたいな種族の事か?」
「はい。二本足で歩いて毛皮を持っていない生き物です。」
「それは毛皮ではないのか?」
「これは服です。毛皮の代わりに寒さから身を守ります。」
彼は不思議な手触りの毛皮…ではなくふく、を脱いで見せた。白くなった!
「これも服です。これ以上は親しい人にしか見せないので…」
また色が変わるのを期待したのに断られた。いや、親しくなれば見られるじゃないか。
「君は私の運命の番いだ。この上なく親しいと思うのだが?」
「うんめいのつがい?」
今度は私が驚く番だった。
「あの…助けてくれてありがとうございます。ぼくは碧葉 、井ノ又 碧葉 です。」
「あぁ、私はリュカだ。良ければ私の家に来てくれ。」
「リュカさん?ご迷惑では?」
「リュカで良い。来て、ずっと一緒に暮らして欲しい。」
「ぼく…、家に帰りたいです。」
つぶらな瞳から大粒の涙がこぼれ落ちる。泣かせたくない。だが、手放したくない。
「アオバの家は探す。だが帰り道が分かるまではうちにいて欲しい。」
「はい…、よろしくお願いします。」
華奢な身体を抱きしめて、治癒術師に礼を言って家に帰った。
「く〜…きゅるるるるる〜〜。」
何やら可愛らしい鳴き声がアオバから聞こえた。
「アオバの鳴き声か?可愛いな。」
「…き、聞こえたんですか?お腹が空いたんです…。」
「アオバの種族は何を食べるんだ?」
「えぇと…野菜、果物、肉、魚、穀物…です。」
他は分かるが、野菜?
肉を食べると言う事はこの小さな身体で狩りをするのか?いや、羊や鳥を飼っているんだろう。…羊に遊ばれそうだが。
とりあえず果物と穀物と肉ならあるから食べさせよう。
「あのう…肉と穀物は加熱しないと食べられないので、果物だけいただきます。」
「かねつ…」
「肉や魚を焼いたりしませんか?」
「肉も魚もそのまま食べる。焼いたら真っ黒になって食べられなくなるぞ。」
「燃やす訳ではなくて、美味しくするんです。」
火は灯りや暖をとるために使う。弓を作るのにも使うが、食べ物に使うのは聞いた事がない。
「この布はこの里で作っているんですか?」
「ぬの…織物はアラクネ達からもらう。家を作るのに必要だからな。」
「服は着ないんですか?」
「織物は貴重だし毛皮があるからふくは要らない。織物は家の一部にしか使わない。これはアラクネの長の息子を助けた礼にもらったんだ。」
小さなアオバならすっぽり包む事が出来そうな大きさの、光沢があって手触りの良い織物。なかなかもらえる物じゃない。
織物を手に入れようと思ったらアラクネ達の好きな植物を見つけて交換するか、荷運びや力仕事を請け負ってその対価としてもらう。
羊の毛も欲しがるのでそれと交換する事もある。
「あっ!その実は一口で食べないと汁が…」
ぷちゅっと弾けた皮からたっぷりと溢れる果汁。ふく、と言うものが濡れて顔と同じような色に変わった。露の実の汁は色がつかないはずだが。
「甘〜い!でもペタペタする…」
困った顔も可愛い。川で身体を洗えば大丈夫だから、連れて行こう。
「食べ終わったら川で水浴びをしよう。」
「はい。」
アオバの口は小さくて、露の実が一口で食べられないようなので、他の食べやすそうな実を勧めた。かなり柔らかいものしか食べられないようだ。
片手に乗るほどしか食べていないのに、満腹だと言う。少食だから小さいのか?いや、まだ子供なのか。
川に連れて行くと、川に手を入れて何かを確かめた後、何故か水に入る事を躊躇う。そうか、小さいから流される危険があるのか。
「アオバ、私が洗ってやろう。」
「い、いや、自分で…」
遠慮する必要なんてないのに。
ひょいと抱き上げて川に入り、ゆっくりと水につけた。
「ひっ!冷たいっ!」
「冷たい?」
「ふっ、服、濡れちゃったら、着替えがないのに!」
その服を洗いに来たのだから、身体ごと洗った方が早いはずだ。何か間違えたのか?岸に上がって地面に降ろすと、アオバはガタガタと震えている。何故、水を払わないのだろうか?
「アオバ、何故身体を揺すって水を払わないんだ?寒いんだろう?」
「服は脱いで洗うもので、着たまま水に入ったりはしません!…ふぐっ…うぇっ…ぐぅぅ…」
目に涙をいっぱい溜めて、でも泣かないように我慢している。あぁ、泣かないでくれ。
「すまない。すぐに脱いで…」
「こんな所で、着替えもなく脱ぐなんてできません!!」
ますます怒られた。
「い、家ならいいのか?」
「うぅぅ…家なら、良いです。」
また抱き上げて大急ぎで家に帰ると、服を脱ぐから向こうを向けと言われた。
あ。
「この織物を服の代わりにできないか?」
「見ないで下さい!!」
織物を渡そうと振り返ると、上半身だけでなく腰から下も毛皮のない、全身ツルツルの後ろ姿が見えた。尻は小さすぎて、俺を受け入れられないんじゃないだろうか。とにかく小さい。
それに、尻尾がなかった!!
「尻尾を無くしたのが恥ずかしいのか?」
「人間に尻尾はありません!」
「怪我でもしたのかと心配したが…尻尾が無いと大事なところが丸見えじゃないか。」
「だから服を着て隠すんです!」
「寒さから身を守ると…」
「もう!良いからまず、織物を貸して下さい!」
織物ですっぽりと身体を覆ってしまった。つるつるの身体は華奢で柔らかそうでとても興味深いから、もっと見たかったのだが。
「まだ寒いか?」
また抱き上げると、確かに冷えていた。
「温かい…」
「このまま温めてやろう。」
火を焚く季節ではないので家の中に薪を用意してなかった。後で持ってこなくては。抱き上げたまま寝床に座り、何とは無しに柔らかい頭の毛を弄んでいたら、アオバはいつのまにか眠っていた。
翌朝、目を覚ましたアオバは器用に織物を巻きつけて濡れたふくを木の枝に広げてぶら下げた。
「この織物は貴重なんですよね。」
「そうだ。普通の織物はもっと硬い。」
「なにか服に出来そうな物はありますか?動物の皮とか。」
動物の皮ならある。
たしか赤ん坊用に柔らかくした皮が長の所にあるはずだ。
「長に挨拶に行って、使えそうなものをもらおう。」
「すみません、対価は…」
「アオバは私のつがいだ。すべて私に世話をさせてくれ。」
「お返しできる物が見つかるまで、お言葉に甘えさせて下さい。…そう言えば運命のつがい、って…何ですか?」
「知らないのだったな。」
く〜きゅるるる〜…
空腹の時の鳴き声だ。
食事をしながら話をしよう。
甘くて柔らかい果物と水を用意して、テーブルの上に並べた。私は座って丁度いい高さなのに、アオバは立たないと届かない。近所から子供用の台を借りてきた。
「ありがとうございます。いただきます。」
中身は柔らかいが殻が硬い実をナイフで割ってやれば自分でもやりたがる。だがコツを掴んでないから割ることが出来ない。
「ここにナイフを引っ掛けて捻ると割れるんだ。」
真剣な顔で説明を聞き、やってみるとすぐにできた。アオバは器用だ。
「それで、運命のつがいについてだが…」
私は皆が当たり前に知っている事を話して聞かせた。
ケンタウロスは繁殖期 になるとフェロモンを出してその繁殖期 だけの相手を誘う。だが、運命のつがいを得ると他の誰にも発情しなくなる。そのかわりつがいとだけは繁殖期 以外にも番うことができる。
運命のつがいを得た証に、身体にのどこかにトライバルタトゥーが現れる、と。
「アオバにも私と同じタトゥーが浮かび上がっているはずだ。」
「…ありませんよ。」
「オメガのタトゥーは小さいし、うなじとか脇の下とかの、きっと見つかりづらいところにあるんだろう。」
「おめが?」
オメガも知らないのか?
アオバが両手を上げて脇の下を確認しているが、無いようだ。後で他の場所を探させてもらおう。
食事が終わったので長の所に行く。
アオバはふくが…と気にしているが、ケンタウロスはふくを着ないから何が気になるのか分からない。
長に運命のつがいを得た事を伝え、アオバを紹介する。そしてアオバの家も森の見回りのついでに探してもらうよう、頼んだ。
「それと、アオバはにんげんと言う種族で、毛皮がないからふくをきるのだそうだ。身体を包める大きさの柔らかい皮があったら譲ってくれ。」
「分かった。探して届けさせよう。」
「あの、ありがとうございます。しばらくお世話になります。」
アオバは丁寧に頭を下げてそう挨拶をした。
私は今日は夜警に回してもらったので、アオバを私の腕の中で寝かせてやれない。1人で眠れると言うが、心配だ。
「寝床はここだが、眠れるか?」
「えっ!?藁に直接寝るんですか?」
「? にんげんはどうやって寝るんだ?」
「ええと…マットと、織物で包んだ綿を敷いた上で横になって暖かい季節は毛皮のような織物を乗せます。」
「そんなに織物を使うなんて!?アラクネに近い種族なのか?」
「アラクネを見た事はありませんが、多分違うと思います。」
ケンタウロスもアラクネも知らないなんて、一体どこに住んでいたのか。あまり遠くないと良いのだが。
一度に食べる量が少ないせいか、また腹が減ったようだ。たくさん食べて大きくなって欲しい。果物ばかりでは具合が悪くなるので、穀物を食べたいと言う。
だが、穀物をにるなべ、と言うものが分からない。桶に似た物のようだが、金属製の桶はない。それを使ってかねつするらしい。桶でも良いだろうか?
と、悩んでいたらアオバが丸い石を拾って来て水で洗って火の中に入れた。
水を汲む桶に穀物と赤ん坊が食べる柔らかい草と水を入れて熱くなった石を入れる。ジュワッと言う大きな音と白い靄がでた。また石を取り出し、他の熱くなった石を入れるのを数回繰り返すと、不思議な香りがして来た。そして最後に細かく砕いた岩塩をひとつまみ。
魚も食べると聞いていたので川で獲って来たら、治癒師に教えてもらった無毒で味の無い細い枝に刺して、やはり岩塩をまぶして火で炙った。
私が食べてみたいと言うと、惜しげも無く分けてくれる。
「美味い!こんなに美味い物を食べたのは初めてだ!」
穀物で作った「ぞうすい」と言う物は柔らか過ぎて飲み物かと思ったが、アオバはもぐもぐと口を動かしている。こんなに柔らかくても噛むのか。
「お口に合って良かったです。」
「その、『にるなべ』と言う物があるともっと色々作れるのか?」
「あはは。『煮る鍋』じゃなくて『鍋』です。他にもフライパンとかあると良いなぁ。」
「金属の物はドワーフが作っているから、今度行こう!」
「え…でも…」
「頼む!アオバが作る美味い物をもっと食べたいんだ!」
「分かりました。そういう事ならお世話になっているんですから、がんばって美味しい物作りますね!」
アオバに必要な物はマットとふくと毛皮と、なべとふらいぱん。今夜の見回りが終わったら長にドワーフの里へ行く事を相談しなくては。
出かける前に寝床の藁の上に羊の毛を押し固めたマットを敷いたら、アオバが目を輝かせた。
「うわぁ、ベッドだ!これ、フェルトですね。これならちくちくしない!」
「ちくちく?」
「藁を触ってると…ほら。」
傷と言うほどではないが、赤くなっている。こんなに弱い種族なのか。
ぺろり
「何するんですか!?」
「ん?このくらいの怪我なら舐めておけば治るだろう?」
「舐めなくても治ります!」
「すまない。」
嫌がる事をしてしまった。
「いっ、嫌なわけじゃなくて恥ずかしいんです!もう!耳を伏せてしょんぼりするとかずるい!!なんでも許したくなっちゃうじゃないですか!」
それは良い事を聞いた。
何か頼む時は悲しい気持ちを表現しよう。
「アオバ…出かける前に抱きしめても良いだろうか?」
抱きしめさせてくれないと悲しい、と思いながらそう言うと、アオバは顔を真っ赤にして散々迷った挙句、どうぞ、と言ってくれた。
小さくて腕の中にすっぽり収まる感じがとても心地良い。そして感じるアオバの香りは、今までにない安心感と興奮と微かな情欲を抱かせた。
「も、もうお終いです!」
お終いと言われてがっかりする。私はずっと抱きしめていたいのに。
両手を私の胸に押し当てて力を入れている風にも見えるが、あまりにも力が弱い。本当にやめて欲しいと思ってるのだろうか?
本気かどうかは分からないが、嫌われたくないので寂しさを堪えて手を離した。
「行ってくる。」
「行ってらっしゃい。あの…気をつけて。」
怖がらせたくないから森に危険な動植物がある事は知らせていないのに、気遣ってくれるとは。…怪我もしていたし、もしかして森で怖い目にあったのだろうか?
「アオバは怪我をして森で倒れていたが、怖い目にあったのか?」
「…すみません、覚えていません。どうして森にいたのか、どうやって森に行ったのか。何も覚えていないんです。」
「そうか。家を探すにも手がかりが欲しいから、何か思い出したら教えてくれ。」
「はい。」
改めて出かけようと頭を撫でたら、気持ち良さそうに目を細めてすり寄ってきた。
可愛すぎる!!
ただでさえ可愛らしい姿なのに、仕草まで可愛くて、これではアオバの成熟が待ちきれない危険がある。
厳しく己を律さなければ。
森の見回りが終わり、可愛い寝顔を見ながら休息を取り、アオバが目覚めてから持ち帰ったものを見せた。
「これはアオバの物か?」
「あっ!そうです!ぼくのカバンです。」
「瑠璃鴉 の巣にあったのだ。」
深い青色の革製のカバンで、作りもしっかりしているが金属部分の仕上げが素晴らしい。これほどの品を手に入れるにはどれだけの対価が必要なのか。
「それほど高価な物ではありません。羊1頭で5つ、ってところでしょうか?」
「!? これ1つで羊5頭の間違いではないのか?」
「ごくありふれた物ですよ?」
アオバの生まれ育った集落とはいったいどんな所なのだろう?
今日もアオバが作ってくれた朝食は美味い。
焼いた鶏肉と雑炊とさらだ、だそうだ。
食べていたら長が柔らかい皮を選んで持って来てくれた。
「これなら使えそうか?」
「はい!ありがとうございます。」
「それと、これはドワーフのふく…だったと思うんじゃが、わしのじさまがもろうたもんじゃからよう分からん。使えそうなら使ってくれ。」
「何から何までありがとうございます!」
アオバが喜んでいるのが嬉しい。
「長、アオバが金属の道具を欲しがっているのでドワーフの集落へ行きたいんだが。」
「ほう!そりゃぁちょうど良い。斧とのこぎりが使い物にならなくなってしまってな。誰かを使いに出そうと思っとったんじゃ。」
「ならばアオバの服ができたら行って来る。」
「うむ。頼んだぞ。」
それからアオバはふくを2日で作り、私の背に乗に乗る練習をした。
初めは怖がってしがみついていたがすぐに馴れ、収まりのいい場所に乗る。しがみつかれて上半身の乳首を強く触られた時は勃起しかけて危険だった。
走りながら勃起したら何かにぶつかって骨折して子を成せなくなるかも知れない。
休んでいる時でも快楽に負けて幼いアオバを襲ってしまいそうだから気をつけなくては。
準備を整え、出発の日の朝。
アオバの様子がおかしい。
上気した頬、潤んだ瞳、甘い香り。
こんなに幼いのに発情期 が来たのか!?
「リュカ…身体があついよぅ…ぼくどうしちゃったの?」
「大人になったんだ。」
「ぼく17歳だよ?」
「12〜13歳じゃなかったのか!?」
「うぅん、17歳。ねぇ、ここもこっちもぬるぬるして…ぼく病気なのかなぁ?」
「大人になっただけだ。それは子を産むための準備だから心配ない。」
ふくを持ち上げる下腹部の物は小さくて、だが硬く張りつめていた。
「あんっ!触っちゃダメ…」
「だが、苦しいだろう?」
「ん…」
張りつめたものを優しく包み込むと、腰を揺らして擦り付けて来る。動きにあわせて擦ってやるとすぐに精を吐き出した。
より強まるフェロモンの香り。
「リュカ…こっちは楽になったのに、こっちはもっとむずむずするの…」
「すぐにそちらも楽にしてやろう。」
両手と両膝をベッドについた姿勢にさせて中を傷付けないようにゆっくりと指を入れる。
柔らかく熱い後孔は濡れそぼり、指1本ではそれほどきつくなかった。だが2本にしたらきつい…。
焦る気持を抑えつけ、ゆっくりと解していくと苦しそうだったアオバの漏らす声が甘くなり、余裕が出て来たようなので3本に増やす。それを繰り返し4本入った頃にはアオバは3度目の射精をしていた。
「きもちい…のに…もっともっと…ってぇ…」
「私も限界だ。アオバ、私を受け入れてくれるか?」
「ん、欲しい…リュカ…来て…」
ケンタウロスのままではアオバを押しつぶしかねないので変化を試みた。成功だ。
だがあれだけ解したのにまだきつく、苦しそうだ。1番張りだした部分がなかなか入らない。
「リュカ…変身できたの…?」
「変化は…運命の番いがケンタウロスでなかった場合に相手の種族に近い形になれる術だ。…アオバ、苦しいか?」
「うん、苦しい…けど、リュカも苦しいでしょ?」
「あぁ、正直、きつい。そうだ、ちょっと脚を閉じてくれ。」
「えっと…こう?」
思った通り、アオバの脚は柔らかくてぬるぬるで気持が良い。
数回擦っただけで強烈な射精感に襲われ、私はアオバの後孔に押し付けながら白濁を吐き出した。
そして全く萎えない屹立を押し当てると、先ほどより滑りが良くなってようやく先端がアオバの中に納まった。
「くる…し…」
「あぁ、すまない。」
初めて触れる滑らかなうなじに舌を這わせ、小さな乳首を優しく撫でながらもう片方の手でアオバのペニスを撫でると後孔の緊張がほぐれ、少しずつ進み始めた。
「ひぁんっ!そこ、やぁっ!」
少し入った所で甘い声をあげて身を震わせ、可愛らしくイヤイヤする。
「辛いのか?」
「ふぅっ…そこ…変な感じが…してっ…!」
「そうか、なら早く通り過ぎよう。」
できるだけ優しくそう言って、また更に奥を目指すと、4分の3入った所で行き止まりになった。行き止まりを軽く突くと可愛く身悶えた。
うなじや背中に口づけを落とすと、その度に内部が収縮、弛緩する。
馴染んだようなので様子を見ながら小刻みな抽送を始めるとリズムに合わせて腰が揺れ始めた。少しずつストロークを大きくする。
「リュカ!リュカ!何かくる…ぞわぞわして熱い何かがぁ…」
「ああ、私もだ。同じだから安心してくれ。」
「おんなじ?リュカも?」
「同じだ。こんな快感は初めてだ。」
「あっ、きゃっ、ふぅぅぅぅぅっ!」
「くっ!アオバ、愛している!」
それから丸2日、アオバの求めるまま何度も交わった。発情期 とはこれほど幸せなものなのか。
発情期 が終わったのが分かったのか、長が訪ねてきた。
「発情期 が終わったばかりでドワーフの里に行くのは辛くないか?」
「私は大丈夫だし、アオバは私が運ぶから問題ないだろう。」
「まぁ、無理のない程度でな。」
「…んん…」
アオバが目覚めそうな気配で長が暇 を告げる。
「アオバ、身体は大丈夫か?」
「リュカ…?あの…ぼく……」
一気に顔が赤くなり、視線を彷徨わせて何か迷っているようだ。
「どうした?」
「く〜〜きゅるるるるぅ〜」
1日に3度食べるアオバが2日も食べていないのだ。空腹を訴えるのは当然だ。
「すぐに栄養価の高い果物を用意しよう。雑炊も作ってみようか。」
「あの…ぼく…夢を見てたみたいで…それで、何でふくを着てないのかな、って…。」
「身体が熱いと言って脱いだのを覚えていないか?」
「…えっと…」
「発情期 が来てここが苦しい、と教えて助けを求め…」
「そそそそれ!あのっ!?…夢、じゃ…ないの?」
「あれほど私を求めてくれたのは間違いだったのか…?」
「!! だっ、だって…まだ、会ったばっかりでリュカの事、どれくらい好きか分からないし…」
「私はアオバだけを愛している。他の誰も要らない。アオバは違うのだろうか?」
運命の番い以外を選ぶつもりなのか…?
「私以外に愛する者がいると言うなら…そう言ってくれ。」
「他に好きな人がいる訳じゃないです!それに…リュカも好き…だし…ただ…」
「ただ?」
「…ただ、欲望に流されて相手を求めるなんて、はしたないって言うか…」
「発情期 に抗える者など存在しない。まして、運命の番いと出会っているんだ。捻じ曲げれば気がふれる。」
「そっ!?…そうなの?」
「そうだ。だからアオバは身を守るために本能に従ったのだ。」
「…ぼくがはしたないんじゃ、ない…?」
「この世の掟だ。」
はしたないとは、稀に存在する運命の番いだけでは満足できず複数の相手を求める者の事だろう。私1人をいくら求めた所ではしたなくなどない。
それに何より愛らしかった。
「身体が大丈夫ならドワーフの里へ行こう。」
「立てる気がしません。」
「治癒師を呼ぼう。」
「休めば治りますから!!」
何か恥ずかしがっているようなので薬だけもらって来た。まずは果物を食べさせてその間にぞうすいを作る。
美味くできた気がする。
「アオバ、ぞうすいができたのだが、食べられるか?」
「ありがとう。いただきます!」
熱くないようにふうふう息を吹きかけて口に運んでやると、はにかみながら口を開ける。
「おいしい…リュカはすごいね。1度見ただけでできちゃうなんて。」
「だが、1度は作り方を見せてもらわなくては無理だ。」
「じゃあ、色々作ります。」
眩しい笑顔でそう言ってくれた。
これからの幸せな暮らしを思い描く。
アオバがずっと笑顔でいられる未来を。
【感想はコチラまで→】香月美都(かづきみつ)@kadukimitsu
ともだちにシェアしよう!