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アンデッド御用達の酒場②
◇ ◇ ◇ ◇
「ティーナさんは、さっきのウィリアムさんを僕らに救ってほしい……それで間違いはないですか?」
「ええ、それもあるけれど――救ってほしい人は……他にもいるの。それは、ここで気を失っているアンデッドの皆よ。貴方達がクラーケンを始末したら、クラーケンにやられた皆は――無事に成仏できる。だから……クラーケンを倒してほしい。これは、貴方達にしか頼めなあの……だから、お願い……私が大好きな人達を救って―――」
ティーナさんはこの酒場に来た頃とは、まるで別人のように沈んだ顔をしながら自分の切なる思いを僕達に話してくれる。
勿論、すぐにでもウィリアムさんを追いかけて彼らを救いたい。しかし、それには――ある事が必要だ。それは、目の前にいて少し戸惑っている仲間達に僕と同じように彼らを救いたいかという同意を得ること―――。
僕は、ぎゅうっと右手を握りしめてから決意をすると――すう、と一度軽く息を吸う。
「……僕はティーナさんが言うように――ウィリアムさんやここにいるアンデッドの皆を救いたい。でも、それは――僕一人だけじゃとてもじゃないけど出来ない―――だから、皆の力を貸してほしいんだ。 」
クラスメイトとして、学校ではほぼ一緒の時を過ごしていた誠ならばともかくとして――このミラージュに来てから、あんな状況で行動を共にするようになったミスト達が僕の思いに同意してくれるか――少し不安だったのだ。
―――しかし、
「――何言ってるの、マコトの恋人くん。確かにあんな異様な状況で行動を共にする事になったけど……もう仲間でしょ――クラーケン退治頑張ろうね」
「ったく……面倒くせえけど――こんな状況じゃ……仕方ねえな。俺様がクラーケンなんて、ぶっ倒してやるぜ!!」
「…………勝手にしろ」
ミストやナギは割と僕の思いに対して好意的な答えを返してくれたが、サンは眉間に皺を寄せながらボソッと一言だけ返してきた。
(うう―――サンは僕の苦手なタイプだ)
今さらながら、僕は心の中で――そう思うのだった。
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