―――キメラ。 ―――またの名を合成獣ともいう。 【パパ――早く、早くパレードへ行きましょう。ほら、新しく家族になった――かつてはヤツラの仲間だったこの子も、みっともなく涎を垂らしながら新しい獲物のヤツラを食べたがっているわ】 檻の中から飛び出して元気な声でハキハキと愉快そうに話しているのは、左半身は普通の人間の幼い子供の姿だが反対側が猫の姿をしている女の子らしき姿。しかし、人間の幼い子供の姿と猫の姿の繋ぎ目は乱雑で強引にくっつけられていて、所々――真っ白な綿のような中身が飛び出している。 【そうそう、早くパレードを始めようぜ。もう、お腹がすいてすいて堪んねえぜ。パパ――ヤツラを見つけたら、オレが先に食っちまってもい～い？】 続いて、真っ白な綿のような中身がお腹から飛び出している左半身が幼い子供の姿で反対側が犬の姿をしている男の子の声が【笛吹男】へと話し掛けてきた。グーキュルルルと中身が飛び出してしまっているお腹から空腹音が鳴っているのが分かる。 【ｸﾞﾙﾙｯ―――グゥゥゥゥｯ―――！！】 上記の二人とは違い、人語を話さない存在―――それは、ドッペル虫により狂暴化しているガルフだ。 しかも、ガルフの白銀の毛だらけの腹には――まるで、無理矢理埋め込まれてしまっているかのような苦悶の表情を浮かべている人間の子供の顔があるのだ。 【まあまあ、まだ――アダムの準備が済んでいないようだからね。アダム、私達は外で待っている――早く何処かに隠れてしまったイビルアイを納得させ、私達のパレードに参加させるんだ。】 【は、はい――ダディ。で、でも……イビルアイをパレードに参加させる為には不死のキスをさせなくては……っ……】 【それが何だい？何か問題でもあるのかい？アダム――君は前の世界でも《教師》である私の言う事をよく聞いてくれた。たとえ生まれ変わった君でも――それぐらい容易な事だろう？もし、イビルアイをパレードに参加させなければ――それなりの罰を覚悟しておくといい】 ―――ｶﾞﾁｬｯ！！ ――ﾊﾞﾀﾝｯ…… それだけ言うと、【笛吹男】とその子供のキメラ達――そして狂暴化しているガルフは【ピエロ的ゾンビ男】を残し、部屋から出て行くのだった。