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一行に襲いかかるは――大海蛇③

▽▲▽▲▽▲ 「本当に――大丈夫なのかな?優太くんと木下誠……。あれから随分と時間がたってるけど……水中からあがってくる気配がないんだけど……」 「あの二人なら大丈夫、大丈夫……って、ほら……あそこに影が出来てる……きっとあの二人がシリカ様を救ってあがってきてくれたんだよ!!」 【チカ】が―――かつては部下である【ハーピーとその仲間達】が群がる大樹を燃やしてしまったせいで、まだ少し焦げ臭さが残っている地上にて未だに暗い沼に沈んでしまっているシリカという少年を救うために、水中に飛び込むという無謀にも思える行いをした二人の仲間を首を長くしながら待ち続けている引田とミストの会話を耳にしながら、サンは影が出来ている方へと目線を向ける。 ―――その視線は極めて厳しく鋭いものだ。 それというのも、ほんの少し―――違和感を抱いたからだ。 「…………おかしい」 「……え、何が……おかしいの?だって、沼の中には……無害な以津真天の群れと……シリカ様、それにユウタ達しかいないじゃない。ミストだって現にこの目で……っ…………」 サンの言葉を聞いて怪訝そうな顔をしつつも影が出来た水中の方へ目線を改めて向けたミストが途中で言葉を切る。 「―――影が、あいつら三人分の物にしては……小さ過ぎる。あれでは、せいぜい一人分……これは、一体………っ……」 ぶつぶつ、と呟きながら考え込んでいるサンと……そんな彼の隣で嫌な予感が頭によぎり真っ青になりながら水中をジッと見つめ続けるミスト。 「ちょっと、サン―――これ、ちょうだい。得たいの知れない事が解決されないままなのって――すごく気持ちわるいし後味わるい。あとで無事に此処から出られたら、弁償するから!!」 「おい、勝手に…………っ……」 ―――グイッ ふいに、引田がサンの懐から弓矢を取り出すと―――そのまま何の戸惑いもなく、影が出来てる水中の方へと弓矢を放り投げた。 「おい、それは貴重な高級矢だぞ―――っ!!くっ、必ず弁償してもらうからなっ……」 「あっ…………何か……浮かんで……きたって……あれ、何なの!?」 普段は堅物で冷静なサンの苛立った声を無視するかのように、引田が弓矢を放り投げた方へと指差す。 そこに、浮かんできたのは……天使のように美しい石像と化してしまったシリカだったのだ―――。

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