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悪夢から醒めなさいと――仲間は言う③
ハッと我にかえり、誠の目に飛び込んできたのは―――周りの物や仲間達が歪み巨大化してしまっているように錯覚してしまう前にいた【失われつつある世界】へといる事に気付いた。
何故、その事が分かったかといえば――目を覚ました自分の側にうつ伏せになりながら未だにグッタリと横たわったまま――まるでマネキンのように微動だにしていないミストと、そんなミストと目を覚ましたばかりで半ば混乱している誠とを心配そうに覗き込んでいる引田がいるからだ。
「……ミストは…………まだ目が醒めないままなのか?」
「これは、ぼくの予想だけど―――あのインプにとって一番厄介なのは魔法を使えるミストなんだよ……だから、ミラージュでしか過ごした事がないミストが知り得ない【不思議のアリス症候群】というダイイチキュウ特有の概念を利用して精神的に攻撃してきた―――」
「―――ミストの杖はインプ達にとって脅威でしかないけれど――それを鉛筆に変えてしまえば大した脅威にはならないからね。なかなか、知能があるインプ共だよ……まったく―――。しかも、優太くん達は未だに真っ白な折り紙にされて押し入れの中……これから、どうすんの……木下誠?」
「おい、お前も考えろ……っ……それに、いい加減―――木下誠と俺を呼ぶのは止めて……下の名前で……っ…………」
と、思わず中途半端な所で言葉を切ってしまったため目の前にいる引田が不思議そうに首を傾げつつ此方を見てくる事に気付く誠だったが――そんな事はお構い無しといわんばかりに急いで白い折り紙で折られている優太・サン・ライムスが捕らえられている半開きの押し入れへと向かって行くのだ。
それというのも、誠の頭の中に――ある考えがフッ……と閃いたからだ。押し入れへと駆けていく最中、グッタリと横たわるミストが握っている【鉛筆へと変えられた杖】を拝借して半開きとなったままの押し入れの襖をガラッと完全に開けるのだった。
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