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悪夢から醒めなさい――と仲間は言う②

しかし、その引田の自分を説教するかのような声に対して――今だに世界が歪み周りの物が巨大化していると感じずにいられない誠は違和感を抱いてしまう。 ようやく強烈な頭痛と眠気から逃れられたとらいえ、未だに自分を豆粒みたいだと思ってしまっている誠の目には―――巨大化し蹲りながら互いに頭を抑えて苦痛に耐えきれないといわんばかりに身悶えているミストと引田の様子が映っているからだ。 『もう……っ……じれったいな――ダイイチキュウにいた頃は……お前のことなんて大嫌いだったけど……何だかんだ頭はイイ奴だと思っていたのに……まだ、そっちの世界が何なのか気付けないわけ?いい加減、夢から醒めろよ……っ……空想の夢の世界に捕らわれた……不思議の国のアリスじゃあるまいし……っ……』 と、そこで―――ハッと雷鳴に打たれたかのような衝撃が誠の体に走る。それというのも、とある病名が誠の頭の中に唐突に浮かんできたからだ。 『不思議の国のアリス症候群』 子供によく見られる症例であり、まるで自分か不思議の国のアリスになったかのように周りの物や人が歪んでしまったり巨大化又は縮小化したりと錯覚してしまうらしい。なんでも、風邪を引いたりした時に見る悪夢の中でこのような症状に襲われてしまう事もあるらしく、誠はかかった事はなかったもののダイイチキュウにいた頃にテレビか何かでこの『不思議の国のアリス症候群』にかかった事のあるエピソードを見た事がある事を思い出した。 「不思議の国のアリス症候群か―――ということは……もしや、ここは……っ……夢の世界――なのか……っ……」 『そうそう……それさえ分かったら――あともう少しで其処から出られるよ……さて、問題……夢の中で自分が夢の中にいるという事を自覚して自由に動くことも出来る現象の事を何というのかな――ここまで教えたら……博識で意外とロマンチックだったお前なら分かるよね?じゃあ……ぼくは大嫌いなお前が其処から抜け出せるって信じてるから……あとはジッとマネキンみたいに待ってるよ』 と、それ以降は何処からか聞こえてくる引田の声は聞こえなくなってしまうのだった。 そして、再び―――誠は思考し始める。 大事な仲間達を救うために―――。

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