444 / 713
悪夢の中から醒めて②
―――上半身は水に濡れていて美しい黒髪からポタポタと雫が流れているとはいえセーラー服を身に付けているのは変わらないし濡れているという点を除けば概ね普通の姿だった―――とホワリンは語る。
―――下半身はそれはそれは異常としかいえないものだったらしい。水色のスカートは、まるで魚の鱗のように変化していて更に美々のすらりと伸びた長い両足を包み込むように長く伸びていてその先端はパックリと二つに割れていて、例るなら人魚のようだった―――とホワリンは語る。
しかし、それも驚きだが―――更に息を飲んでしまうほどに衝撃を受けたのは最初に美々の姿を見つけた時からずっと彼女の体が宙浮いている事であり、暫くしてからすっかり姿を変えてしまった美々の体をスーツ姿の男が抱き上げていて――そして満足げに微笑んだ後ですぐに二人共姿を消し去ってしまった事だ―――とホワリンは語る。
「んで、美々ちゃんがコンノとかいうふざけた野郎と姿を消した後で―――床にこれが落ちてたんだよ。解読しようとしてみても、水に濡れてるはミラージュの言語だわで――訳がわかんねえ……まあ、何はともあれ――てめえらが帰ってきて良かったぜ」
ホワリンの白い背中に存在している赤い一つ目がギョロッと動き、どことなく悲しげな感じてその落ちた物(水に濡れていて文字が滲んで見えない茶色の羊皮紙だ)を見つめてから、そう僕らへと言ってくれるのだった。
※ ※ ※
その後、僕らは―――これからどうするのか皆で話し合った。早々に美々を探したいのは山々なのだが流石に身も心もヘトヘトで皆の英気とミストの魔力を回復させるためにも一旦は休息しようということになったのだ。
―――ミストは【かつて栄えた失われつつある世界】で膨大な魔法を唱えて魔力不足に陥ってしまっていたのだ。
誠が押し入れで真っ白な折り紙にされている僕とサンとライムスを発見した後で―――誠はインプ共に変えられてしまった【鉛筆に変化させられた杖】を用いて真っ白な折り紙に僕ら全員の《名前と種族》を書き込んだのだ。誠いわく、無機質な折り紙に僕らの名前書いて命を吹き込み戻した―――と言っていた。
だから、僕ら三人は元々の姿へと戻る事が出来たらしい。
そして、最終的にはミストがインプの術が消えたおかげで元に戻った杖を使って《中級魔法・イガ・エシーバ》を唱えてインプ共を僕らが捕らえられていた折り紙の中へと封じ込め退治したのだった。
ともだちにシェアしよう!